FABEX2022:主催者特別セミナー 農林水産省・久保牧衣子地球環境対策室長 持続性高めて成長産業へ

久保牧衣子地球環境対策室長

久保牧衣子地球環境対策室長

ファベックス2022の主催者特別セミナーで、農林水産省・大臣官房地球環境対策室長の久保牧衣子氏は「みどりの食料システム戦略について」と題し、同省が昨年5月に策定した長期戦略の背景からその基本方針と目標、目標の実現に向けた今後の新たな政策など、取組みの方向性について紹介した。

久保氏はまず、食料・農林水産業の現状について「50年に世界人口は100億人に達し、飲食料市場は30年には15年比で1.5倍と予想される中、日本の食品輸出は21年に初めて1兆円を超え、数年で大きな成長を遂げている。さらに技術革新が食品産業の現場でも進み、今の環境課題を飛躍的に解決できる可能性も高まっている」と述べ、食料・農業が産業としての持続性を高めながら成長できる潜在力を持つとの認識を示した。

その上で、担当室長として初期段階から策定を担った「みどりの食料システム戦略」に言及。その目指す姿として14項目のKPI(重要評価指標)を説明し、食品企業が目指すべき労働生産性の向上や、食品ロス削減について触れた。また戦略によって期待される効果として「輸入から国内生産への転換(原料調達)」が挙がっていることに関し、「全部ではない。バランスの問題だ」と補足した。

また同戦略は調達から消費に至るサプライチェーン各層で取り組むもので、食品産業が位置する加工・流通は「1次生産と消費をつなぐ重要な役割」と指摘。特に商品・物流情報のデータ連携など情報分野と物流部門は今後、「競争から協調へとシフトしていく」との見解を示した。さらに戦略目標を実現した場合、創出される50年時点の市場規模について、19年比で約2倍となる272兆円とする試算値を紹介。うち食品産業は「海外展開を含めた食品製造、外食産業が130~165兆円と最大で2.1倍」との数値を示した。

最後に通常国会で成立予定の「みどりの食料システム法(略称)案」について、そのポイントを整理。新法や税制改正に基づき、「各種の補助事業予算、脱炭素化のための投資促進税制、新たな公庫融資制度を組み合わせ、事業者を支援していく」と力を込めた。

(本宮康博)

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら

書籍紹介