ヤマトグループ総合研究所・木川眞理事長 ジビエの小口保冷で輸出も視野
野生鳥獣の食肉ジビエの消費普及の鍵の一つを握る低温輸送のインフラを、衛生管理の国際基準に基づく小口保冷配送を活用した物流イノベーションによって国内に整備することができれば、日本のジビエを高級食材として欧州へ輸出することも視野に入るという。東京ビッグサイトで3日間の会期で20日開幕した第6回日本ジビエサミットin東京(主催=日本ジビエ振興協会)の初日の基調講演でヤマトグループ総合研究所の木川眞理事長(ヤマトホールディングス特別顧問)がこうした見方を示した。
ヤマトグループ総合研究所はヤマトグループで異業種協業、産学官連携、オープンイノベーションを推進する。同研究所が構想する物流イノベーションは、インターネットを支えるパケット通信技術を物流ネットワークに応用するフィジカルインターネットの考え方を日本に導入し、規格化・標準化された容器の活用、複数企業による設備のオープン化とシェアリング(共有)を進めることで輸送、仕分け、保管を変革して効率化を図るというもの。このため、同研究所は9月3日、米国ジョージア工科大学と日本でのフィジカルインターネットの取組みに関する覚書を締結した。
ジビエが食材や加工肉、加工食品の原料として流通するには、全国633ヵ所(18年度)の獣肉解体処理施設と加工場などを結ぶ小口保冷配送を応用した物流ネットワークが必要になるとみており、まずはヤマトグループが鳥取県の獣肉解体処理施設から群馬県の加工場まで、小口保冷配送とセンター間輸送を組み合わせて、0~4度Cの温度管理、抗菌管理の下、生ハムの原料となるシカ肉を約1日で輸送する実験に乗り出している。
輸出に当たっては日本と台湾、中国で普及している小口保冷配送のインフラが相手国にも必要となる。ヤマトグループでは、小口保冷配送での温度管理などのサービス品質を担保するため、ヤマトホールディングスがスポンサーとなって英国規格協会(BSI)を通じて小口保冷配送の国際規格としてPAS(公開仕様書)を策定し、BSIが17年2月28日にPAS1018として発行した。
PAS策定を支援した経済産業省では、同規格の国際標準化機構のISO規格化を進めている。ヤマトグループでは現在、フランスの事業者とはPAS準拠の小口保冷配送でアライアンスを結んでいるという。(川崎博之)