タイの日本食、コロナ第3波で危険水域 飲食店の閉店・撤退増加

外食 ニュース 2021.06.04 12238号 05面
タイで注文の増えている宅配弁当。左から麻婆豆腐、レバニラ、野菜炒めの各定食=バンコクで5月9日、小堀晋一写す

タイで注文の増えている宅配弁当。左から麻婆豆腐、レバニラ、野菜炒めの各定食=バンコクで5月9日、小堀晋一写す

4000店を超す日本食レストランがひしめき合うタイで、少なくない店が存続の危機に立たされている。新型コロナウイルス感染第3波の到来で、4月半ばからまっとうな営業ができていないためだ。一時は店内飲食が禁じられ、再開はしたものの午後9時には店を閉じねばならない。酒類の提供も終日できない。ウイルスの感染を恐れて来店客はただでさえ少ない。政府の補償はなく、打つ手にも限界が見え始めている。

日本人も多く暮らすバンコク・スクンビット通り沿線などで最盛期は6店舗を展開していた日本食店の日本人経営者は、新型コロナの感染拡大を機に次々と店舗の閉鎖を余儀なくされている。つい先日も1店舗を閉め、残るは2店舗だけとなった。公的補償が受けられず資金繰りにもめどがつかないことから、入居する物件の大家に対し家賃の減額・延滞交渉を持ちかけたところ、「家賃が払えないなら出て行け」と一蹴されたという。

出来たての料理を店内で食べてもらいたいとの思いから、コロナ禍以前はあまり取り組んで来なかった宅配サービスにも乗り出した。だが、配達業者が徴収する手数料は高く、思った以上に手元に残らない。同業者が一斉に同様のサービスに乗り出したことから、期待した以上の利用も見込めない。経営者は「何もしないよりはマシだから(宅配を)行っているが、このままでは先は見えている」と言葉少なだ。

日本のように政府・行政当局の意向さえも無視をして営業を続ける店はタイではほとんど見かけない。時間外営業や酒類の提供が判明すれば、罰金はおろか身柄の拘束、営業ライセンスの剥奪さえ起こり得るのが強権国家の実態だ。耐え忍ぶしかないのが現実だが、その余力も日増しに低下し続けている。静かに閉店や撤退をする飲食店は確実に増えている。

日本貿易振興機構(ジェトロ)のバンコク事務所によると、同事務所が展開する日本食普及のためのキャンペーンに参加する200店余りの日本食レストランでは、このところ日本食材の仕入れが落ち込んでいるという。感染第1波の昨年4月、第2波の今年1月にも同様の下落はあったが、今回は「先が読めない状況」だという。食材の仕入れ減は、そのまま売上げの減少を意味する。業界はかつてない危険水域に立たされている。

英国由来の変異株を中心とする第3波は、4月半ばから一気に全国に広がった。それまではどんなに多くても3桁台に止まっていた1日当たりの新規感染者も2000人前後で高止まりとなり、死者も重症患者も急増している。全感染者に対する死亡率も0.2%台だったのが0.6%を超えるまで急伸した。一方、ワクチン接種は日本と同様に進んでいない。

他国に比べ、感染への危機感がひときわ高いのがタイ人の気質であり特徴だ。飲食店が開いていないからといって路上で酒盛りする姿はなく、酔って電車内で大声を出す若者もいない。マスクもほぼ全員が着用し、不満を持ちながらも政府の指示に従っている。それでも猛威を止めない新型コロナ。あと数ヵ月が大きな分かれ目となる。

(バンコク=ジャーナリスト・小堀晋一)

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