タイ、プラごみ全廃再加速 コロナ収束で新たな閣議決定
東南アジアのタイで、食品の包装容器や買い物袋などのプラスチックごみを全廃しようという動きが再び加速している。タイは新型コロナの流行前にプラごみの完全リサイクル化を掲げ削減に取り組んできたが、感染拡大による食事の宅配や持ち帰りの増加から計画は事実上、宙に浮いた格好となっていた。最近になって感染も収束したことから、新たな閣議決定を行うとともに、環境に優しいバイオプラスチックの生産拡大も進めることにしている。
タイ政府は18年、プラごみの完全リサイクル化に着手。手始めに、CVSやSMなどの店頭からレジ袋を一掃させた。政府が掲げたロードマップ(工程表)によれば、27年までにはプラごみ全体の完全リサイクル化を達成する予定だった。
ところが、感染の拡大とともにプラごみが増えるようになると計画は一時的にペースダウン。ロードマップの遂行にも黄信号がともった。ただ、こうした中でも政府職員や民間のSMやCVSが協力してキャンペーンを実施するなど啓発に努めたことから、レジ袋については22年末までの3年間で15万t近い削減に成功。これを弾みとして、政府も完全リサイクル化に向けた方針をあらためて閣議で決めることとなった。今年2月7日に行われた閣議決定によると、全廃・完全リサイクル化の期限は27年までと据え置いた。同時にプラごみの埋め立てを全面禁止する。同じ年までに海洋に流出するプラごみも半減させ、流出しにくいような仕組み作りも始める。タイ国内で排出されるプラごみは年間200万t。再生は4分の1ほどにとどまっている。循環型の消費社会を作るとしている。
今回、海洋へのプラごみの流出に具体的に言及した背景には、昨年9月に東部チョンブリ県で起こったウミガメの大量死がある。生まれて1ヵ月ほどがたったウミガメの子ども11匹が、プラごみ片を飲み込んで浜辺に打ち上げられるという事件だった。ウミガメは治療を受けたが衰弱が激しく、食物の消化ができなくなってすべてが死ぬという痛ましい結果となった。政府が中心となった海洋汚染対策が急務とされた。
これまではほとんど手付かずだったプラごみの分別回収も進める。飲料容器に使われるポリエチレンテレフタレートや食品容器向けのポリプロピレン、発泡容器やフォーク、スプーンに使用されるポリスチレンなど7種に分け、事業所だけでなく家庭でも洗浄の上、分別するよう呼び掛けている。新たに製造される食品向けプラスチック容器についても規格認証の仕組みを厳格化して、違法なリサイクルが起こらないよう安全管理も行う。
中国政府が18年にプラごみの輸入を禁止したことから、タイを含む東南アジアが先進国のプラごみの処分地になっている事態の解消も狙う。段階的に輸入量を減らし、25年には全面的に禁止する。タイから世界に向けたプラごみリサイクルの発信も行う。
プラごみ対策の切り札とされる植物由来のバイオプラスチックの生産拡大も行う。タイの天然資源・環境省によると、世界で生産されるバイオプラスチックの年間量は推定200万t。タイは米国の約15万tに次ぐ世界2位の約10万tで、これを数年以内に20万tに近づける計画を持つ。原材料となるサトウキビやキャッサバの国内調達にも不安はない。加えて、現在は海外向けに9割が輸出されている事態を解消し、国内向けにも拡大していく方針だ。国内向けに供給することで、プラごみの完全リサイクル化にも弾みがつくと読む。5月半ばにはバンコクでプラスチックとゴム関連の国際見本市を開く。技術力の高い外国資本も呼び込むとしている。
(バンコク=ジャーナリスト・小堀晋一)