ビール市場、年末へ販促過熱 減税効果で缶ビール好調

酒類 ニュース 2020.11.16 12147号 01面
年間実績の鍵を握りそうな家庭用ニーズの取り込み

年間実績の鍵を握りそうな家庭用ニーズの取り込み

 家飲みの増加に加え、酒税改正による減税を追い風に、家庭用缶ビールの販売が好調だ。「スーパードライ」「一番搾り」といった大手の主力ブランドは、10月単月の缶商品の販売量が前年同期比で2桁の大幅増を達成。年末に向け販促に一層の拍車をかける計画だ。コロナ禍で業務用を中心に厳しさが続くビール市場。家庭用のニーズをどこまで取り込めるかが、年間実績の鍵を握りそうだ。

 アサヒとキリンの発表によれば、10月の缶アイテムの販売数量は「スーパードライ」「一番搾り」ともに前年同期比で20%伸びた。

 今年の家庭用ビールは、コロナ影響による外出の自粛、巣ごもり消費の増加をベースに販売量を増してきた。これに同月1日からの酒税率改正による小売価格の低下が重なった。

 酒売場のPOPなどで減税を訴求する店舗もあり「ビールへの関心が高まった」(アサヒ)ことが要因とみられる。キリンが減税後に行った調査では、回答者の7割近くが「今後もビールを継続的に飲む」と答えるなど減税が与える消費への効果は大きそうだ。

 これまでにない追い風を受けアサヒは「スーパードライ」で、ビール需要のさらなる活性化に取り組む。10月30日にリニューアルし好調な「スーパードライ 工場できたてのうまさ実感パック」の認知度アップの活動を続けリピート購入を促したい考えだ。同パックは工場で製造した翌日に出荷するビール。10月からは発売を毎月末の金曜日に固定するとともに、商品パッケージ上部に製造日を記載。“できたてのビール”であることをより分かりやすくブラッシュアップした。

 11月からは新たなTVCMの投下を全国でスタート。人気俳優を複数起用し「何かを成し遂げた後に飲むビールはうまい」というブランドメッセージを強く発信していく。長引くコロナ禍で社会が閉塞(へいそく)する中、ビールが持つ普遍的な飲用価値を伝え、消費の活性化を図る。

 一方、キリンは日本初の糖質ゼロビールとして投入した「一番搾り糖質ゼロ」が、発売月の10月に年間販売計画の7割強を達成するなど好調な滑り出しを見せた。この新商品効果もあり、「一番搾り」ブランドトータルでは、缶アイテムの販売が前年同期に比べ8割増と、2倍近い伸びを実現している。

 消費が増える年末に向け、引き続き一番搾り製法による上質な味わいというブランド価値を継続訴求するとともに、コロナ禍で増える健康ニーズに対し糖質ゼロという機能性の提案に努める。(丸山正和)

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