日本ジビエ振興協会、防衛省で試食会 自衛隊食にジビエを

ジビエ料理を試食する河野太郎防衛相。味や価格について熱心に質問していた

ジビエ料理を試食する河野太郎防衛相。味や価格について熱心に質問していた

当日提供されたジビエ料理。大半がレトルト品で、BtoCも視野に入れた販売を目指す

当日提供されたジビエ料理。大半がレトルト品で、BtoCも視野に入れた販売を目指す

 日本ジビエ振興協会は、ジビエ食材の活用に係る講演と試食会を7月20日、東京・市谷の防衛省で開催した。新型コロナウイルスの影響でジビエも販売に苦戦しており、自衛隊員や防衛省職員の食事にジビエ活用を促す狙い。試食会には河野太郎防衛大臣をはじめ幹部や職員ら約50人が参加。海上自衛隊が毎週金曜日に食べるカレーのほか、職員が利用する飲食店でもジビエを使ってもらえるようPRした。

 はじめに、協会代表理事で長野県茅野市のレストラン「オーベルジュ・エスポワール」のオーナーシェフを務める藤木徳彦氏が「20年前に東京から長野に移り住み、農家が野生鳥獣の被害に困っている現状を見てきた。命あるものをおいしく調理すれば、おいしい料理になる。ジビエ活用を検討いただくためにも、まずは料理を味わっていただきたい」とあいさつ。試食では鹿骨のコンソメスープ、猪ベーコンのポテサラサンドイッチ、鹿麻婆豆腐、鹿のしぐれ煮など12品を用意。そのうち7品は協会監修のレトルト品で、近日中の販売開始を目指す。試食は新型コロナウイルス感染症防止のため、一人前ずつ小分けにして提供された。河野大臣は「どれもおいしい。ジビエと言われなければ分からない」と述べ、味や価格について熱心に質問していた。

 ジビエとは狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味するフランス語で、欧州では貴族の伝統料理として古くから発展してきた。野生の鹿やイノシシのため筋肉が発達し良質なタンパク質が多く、脂身の少ない赤身肉といった特徴があり栄養価も高い。骨から取ったスープは、アミノ酸が豊富に含まれているとの実験論文が報告されている。

 日本では食品としての歴史はまだ浅く、14年に厚生労働省が「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」を策定。捕獲した野生鳥獣の肉が家畜と同様、食品として位置付けられた。18年には農林水産省が「国産ジビエ認証制度」を制定。厚生労働省のガイドラインを守る安全・安心な処理施設を認証する制度で、現在14施設が認証されている。藤木代表理事は「猟師が直売しているものもあるがルール違反。衛生管理された施設の中で処理された安全な肉を選んでもらいたい」と話す。

 価格について、鹿肉は1kg当たりロースが4000~4500円、もも肉3000円、骨400円で、豚肉より高く牛肉より安い相場感となる。猪肉は料亭やレストランからの引き合いが強く、入手が困難で、脂がのる秋から冬にかけてが最もおいしいとされる。「夏のイノシシ」は赤身ベースでさっぱりした味わいとなるが、価格は冬に比べて安く、「春から初夏のイノシシも使ってほしい」(藤木代表理事)と話す。

 飲食店や業態によって価格が合わない場合、ハンバーグなら豚ひき肉を入れるなど「100%でなくてもジビエを少しでも使うことで消費拡大につながる」(同)と強調した。(三井伶子)

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