「外食崩壊」の危機 酒提供で業界分断化も

外食 ニュース 2021.06.21 12246号 01面
飲酒客で昼からにぎわっていた「渋谷横丁」も閑散

飲酒客で昼からにぎわっていた「渋谷横丁」も閑散

 1年以上続くコロナ禍で、飲食業界は未曽有の危機に直面している。帝国データバンクの調べでは、2020年1~12月の飲食店事業者の倒産数は780件と過去最多だったが、これは氷山の一角にすぎない。今年に入っても事態が一向に好転の気配を見せないことから6月以降、昨年借り入れた資金の返済不能に陥った飲食店による廃業ラッシュが起きるとも危惧される。=関連記事2面(森明美)

 こうした実情から「外食文化の危機」を叫ぶ声はいよいよ高まっている。10日には、飲食業界の各団体が共同で「外食崩壊寸前」を訴える緊急記者会見を行った。

 これまで飲食業界では連携して政治的な働きかけやロビー活動をする慣習はあまり見られなかった。しかし「このままでは日本の飲食文化は崩壊する」という切迫した状況から、ついに飲食に関わる18団体が「食文化を未来に繋ぐ飲食アライアンス」を掲げて連携し、国民世論に対して声を発したのだ。

 会見では一般社団法人食文化ルネサンス、中国料理店Wakiyaグループの脇屋友詞オーナーシェフら、飲食業各団体関係者、生産者、飲食関連業者が集結した。

 会見のコーディネーターを務めた食文化ルネサンスの二之湯武史専務理事は「飲食店は休業、時短営業、酒類提供禁止などの厳しい制限を受け続け、資金面、精神面で限界がきている」と語り、現在、飲食店に課せられている制限について、「飲食店と一口に言っても立ち食いそば店から個室レストランまで多様な業態がある。一律の政策というのは到底受け入れられない」として、「エビデンスのある対策」を強く求めた。

 さらに「“禁酒”政策の撤回と時短政策の緩和」「感染対策を徹底している店の認証制度による制限緩和」「飲食店周辺の生産者、納入業者の支援策強化」など複数の提言をし、政府や自治体、世論に向けて外食文化復活を訴えた。

 ●滅ぼすな外食文化

 度重なる緊急事態宣言やまん延防止等重点措置による、厳しい制限の中でも特にダメージが大きかったのは「禁酒令」と、多くの飲食店は口を揃える。5月11日期限の緊急事態宣言の再延長が決定したのを契機に「心が折れた」「もはや店が立ち行かない」として、酒類提供に踏み切る店が相次いだ。酒類提供にかじを切った店の多くは、いま連日にぎわいを見せている。平日でも満席が続き、東京都心部では繁忙期さながらに2時間制を敷く店も多い。一方で要請に従う店は活気づくアルコール提供店を横目に複雑な思いを抱えており、業界の中で分断化が起きている。

 「正直者はバカを見ろということか」と非難する声も聞かれるが、通常営業している店とて、この機に乗じてひともうけを企て、ホクホク顔で営業しているわけでは断じてない。協力金支給の見通しすら立たない中、生きていくための苦渋の決断で通常営業を再開したのだ。

 20日期限の緊急事態宣言解除がようやく決定し、7都道府県はまん延防止等重点措置に移行。午後7時までの酒類提供解禁の方向だが、ディナー客で売上げを立てる多くの店にとっては営業不能の事態に変わりはない。

 東京都ではコロナの感染経路は職場、家庭内、施設感染が80%以上に対して、会食における割合は5~6%程度という数字も出ている。前述の会見で二之湯氏が訴えたように、政府、自治体が実施すべきは「科学的根拠に基づく政策」の一択だ。酒、外食は決して悪者ではない。真の敵を見誤り、外食文化を殺してはならない。

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