クリルオイル、サプリ製薬素材で可能性 「南極クリル」の栄養素抽出

水産加工 ニュース 2023.04.19 12567号 01面
原料となる「南極クリル」。小さな体に豊富な栄養素を蓄える

原料となる「南極クリル」。小さな体に豊富な栄養素を蓄える

優れた栄養価値・血中移行性などによりサプリ・製薬素材で高い可能性を秘める

優れた栄養価値・血中移行性などによりサプリ・製薬素材で高い可能性を秘める

過酷な環境下に生息し、生き抜くために豊富な栄養素を体内に蓄える動物プランクトンの一種、「南極クリル」。クジラの主要栄養源にもなるパワーを持つこのクリルから抽出する「クリルオイル」が、国内でブレークの兆しだ。いくつかの国ではすでに高い人気を誇るが、優れた栄養素やオイルの健康価値への関心増を背景に、国内でも将来性は十分。中でもサプリメントや製薬分野での素材として高い可能性を持ち、今後に要注目だ。(村岡直樹)

●クジラの栄養源

地球最大の動物・シロナガスクジラの主食でもある南極クリルは桜エビに似た体長5~6cmの動物性プランクトンながら、生き抜くために極めて豊富な栄養素を小さな体内に貯蔵する。当然ながら、抽出されるクリルオイルも多くの栄養素を含み、オメガ3系脂肪酸やリン脂質(レシチン・コリン)、高い抗酸化機能を持つアスタキサンチンなど多くの成分を含有。特にリン脂質は豊富で、オメガ3系脂肪酸(EPA・DHA)の大半と結合(一般的には中性脂肪と結合)していることから、世界的な注目を集めている。

これら豊富な成分による健康効果は、現在まで多岐にわたる可能性が確認されている。例えば「心臓(コレステロールや中性脂肪など)」「関節(ひざの痛みなど)」「認知機能」「PMS(月経前症候群)」「免疫機能」「運動機能(回復促進など)」「ドライアイ」「美肌」などでは研究成果が寄せられ、ヒト臨床試験で効果を確認。いずれも健康・美容志向やコロナ下での免疫への関心増、高齢化に伴うアンチエイジングなど、国内で高まっているニーズに対応するもので、「オールインワンオイル」としての健康機能を兼ね揃える。

●原料トップ上陸

国内では22年1月、クリルオイル原料で世界シェア80%を保有するAker BioMarine(アーケル・バイオマリン、本社=ノルウェー)が日本法人として「アーケル・バイオマリン・ジャパン」を設立。世界的クリルオイルブランド「SUPERBA Krill(スパーバクリル)」の展開をはじめ、クリルオイルの認知向上や特性・魅力の発信を行うとともに、健康的支援を通じた市場活性化への取り組みを進めている。

同ブランドでは用途に応じた製品グレードや多岐にわたる製品を用意するが、機能性はもちろん、特性を生かした新しい可能性の面でも注目されている。例えば中性脂肪低下作用による高脂血症改善薬分野では、空腹時の作用効果が低減するという課題解決として、クリルオイルの可能性が報告されている。リン脂質によるものと考えられるが、タイミングを選ばない摂取が可能となり、健康生活への貢献につながることが予想される。

また、既存原料の効果を高める高リン脂質の「血中移行性」にも要注目だ。同時摂取することで、例えば骨形成促進に有効なビタミンD3や、目の健康効果で知られるルテイン、アンチエイジング効果で確認されているコエンザイムQ10などで血中濃度が高まることが確認されている。

また、同社南極クリル原料は、持続的で環境に優しい「エコハーベスティング漁法」により漁獲され、混獲率はほぼゼロに抑える。資源の持続可能性を守る事業者を認定する「MSC認証」をクリル漁業として世界初で取得するなど、サステナブル分野でも世界的にリードしている。

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