忘れられぬ味(30) 新進名誉会長・篭島 萬亀 アマゾンのピラニア

総合 統計・分析 1998.01.26 8320号 2面

私は旅行が好きで毎年国内、海外と旅行を楽しんでいる。昭和33年、35年、38年と世界一周旅行を三回実施し、合計三六ヵ国を歴訪している。私は食べ物に好き嫌いがないので、何処の国の料理も興味をもっておいしく食べられる。

超一流のレストランや料亭のシェフや板長の長年の経験と修業による材料選び、材料の活かし方、細かい気配りの行き届いた料理は最高であるが、世界各国の大衆レストランの味のなかにも決してあなどれないものもある。

私は迷い性で、そのうちでどれが一番忘れられないかを選ぶことは出来ない。そこで私は老齢で二度と行って食べるチャンスがないと思うが、もう一度食べてみたいと思う、次の二つを発表することにした。

A・K・Kという会で南米ブラジルに旅行した際に、アマゾン河の上流でピラニア釣りをして、帰りの船内で天ぷらにしてもらって食べた味はもう一度食べたいと思う。

ピラニアは肉食魚で、生の牛肉のサイコロ切りをえさにして釣るが、河に入れるとすぐ喰いつき、みんな三〇匹以上釣った。人間が皮膚にナイフで傷を付けてアマゾンに飛び込んだら、生きて帰れないどころか、骨だけにされてしまうといわれる。さぞ異な味であろうと思って食べたら実にあっさりしていて、歯ざわりも良く、沢山食べた思い出がある。その夕方、マナオスのホテルでピラルクのステーキを食べた。食堂の入口にピラルクのはく製が展示してあったが、約二mもある大魚で、どう見てもうまそうには思えなかった。さぞかし異な味であろうと思って食べてみたら、意外にあっさりしていて美味であった。人は見掛けによらぬものというが、魚も同じだなと思った。

私は酒好きなので、ワインの話をさせていただくが、初めてヨーロッパへ行った時に、ディナーの際にソムリエに知ったかぶりして、何年物の何といったり、連れていってくださった人におまかせし、ラベルをはがしてもらって来たりしたが、ソムリエに私はこれとこれを食べるとメニューを指し、ワインは君におまかせするというと、ソムリエは大変喜んで、料理に合ったワインを決して高くなく、おいしいものを提供してくれることを憶えた。((株)新進名誉会長)

 

日本食糧新聞の第8320号(1998年1月26日付)の紙面

※法人用電子版ユーザーは1943年以降の新聞を紙面形式でご覧いただけます。
紙面ビューアー – ご利用ガイド「日本食糧新聞電子版」

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら