忘れられぬ味(25)美ノ久・加藤勉社長「共同ソース・今昔」

仕事関係の友達で、卒業してからこの三〇年間よく二人で海外旅行をし、いろいろ食べ歩きました。忘れられぬ味、両手でも足りないくらいあります。

イズミール(トルコ)では片手では持てないくらい大きなロブスター、モロッコでは羊の頭のみのシシカバブー、暗くてよく分からなかったからよかったのですが…。また、万里の長城で欠けた茶碗で飲んだ赤ワイン、デイジョン(フランス)で飲んだ白ワインの味など。若い頃は何でもかんでもナイフとフォークを使っておりました。ステーキなど昼夜一一日間半、連続二三回食べ続けました。今までの記録です。今思えば相当格好付けてたんですね!もちろん酒はバーボンかスコッチウイスキー、時にはウオツカ、ジンをすべてロックで朝まで。日本酒なんてとんでもない。つまみはエスカルゴにキャビア、特にキャビアが大好きでいろいろな町で食べました。

ところが最近は鍋奉行よろしく和風、中華、韓国、タイ風と挑戦し、また季節がら、月を見ながら縁側で日本酒を、もちろんつまみは小芋の煮物と茄子キュウリの漬物、うまいですね!真夏の暑い時でも熱燗、そして常に箸、ナイフとフォークはどこへやら!

思えば四五歳を境にこんなにも変わるものかなあ!と、自分自身が信じられない思いです。今から二八年前結婚する直前、義兄に家の近くの串カツ屋さんに連れて行ってもらいました。そこで弁当箱みたいな箱に入ったソース。思わず共同ソースと名付けてしまい皆に笑われました。

そんなことを思い出しながら四、五年前から公私ともお世話になっている友達の紹介の焼鳥屋さんで軽く一杯。この店でもやはり共同ソースが置いてあり、串カツとキャベツにつけて。お陰で友達の輪ができ、いろいろ四方山話をつまみに日付変更線を越えるまで。最初の共同ソースにはビックリ。今じゃ仲間と共同ソースを付けるのが一時の楽しみ、大いに語り、明日への活力のために美酒に酔いしれている日々でございます。

((株)美ノ久・代表取締役社長)

日本食糧新聞の第8689号(2000年5月19日付)の紙面

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