なぜ和牛は外国人にウケるのか 家畜改良センター、輸出拡大に向け初調査

国産牛肉の輸出実績は着実に増加。7年間で863tから3560t、50億6000万円から247億3000万円になり、枝肉卸売価格(中央10市場平均)も1kg約1500円から約2500円に跳ね上がった。いずれも衰える気配はなく、今後も高水準の推移が見込まれる。ところで「なぜ和牛は外国人にウケるのか?」。独立行政法人・家畜改良センターは、その根拠と傾向を示す研究論文を「外国人の和牛肉に対する嗜好性調査」として「肉用牛研究会報」で近々発表する。

論文は和牛の輸出拡大を目的に作成したもの。食品事業の関係者として来日した外国人に和牛の試食アンケートを行い、16ヵ国・1030人の回答を基に、欧米・豪州圏(欧米豪圏)とアジア圏の感受性の相違などについて調査・執筆した。

和牛は海外産牛に比べて筋肉内の脂肪交雑(サシ)が多く、「軟らかさ」「ジューシー」「和牛香(甘く脂っぽい香り)」の3点が魅力。今回の試食アンケートは、和牛香の感受性を重視して行われ、「試食肉(和牛)を好むか?」の問いでは「好き」の回答が圧倒的多数(97.2%)を占めた。また、「軟らかさ」は世界共通で好まれるが、「ジューシー」はアジア圏で、「和牛香」は欧米豪圏で、より好まれることが新たに分かった。

調査結果を生かす輸出振興については、二つの方策が示された。アジア圏では普段食べる牛肉の脂肪分が比較的多く、日本と似た薄切り調理の食文化を有する。したがってアジア圏には引き続き「軟らかさとジューシーさ」を訴求するのが有効。欧米豪圏では普段食べる牛肉の脂肪分が低く、焼くを基本にした厚切り調理の食文化。したがって欧米豪圏には「脂肪の多い和牛に適した調理法」を訴求するのが有効であり、さらに「ももなど赤身の多い部分をPRする必要がある」と指摘した。

和牛は牛肉の輸入が自由化して以降、海外産牛と差別化するため、和牛の魅力である脂肪交雑を増やす改良が続けられてきた。しかし昨今は、全頭の85%以上が4等級以上(BMSNo.5以上)となり、脂肪含有率が約50%に達するなど、脂肪の行き過ぎを懸念する向きもある。

論文著者である家畜改良センター企画調整部改良技術課の尾花尚明氏は「和牛のおいしさには脂肪量と脂肪質が関係していると考えられ、適度な脂肪量は食感を軟らかくジューシーにし、甘く脂っぽい和牛香を高める。また脂肪を構成する脂肪酸のオレイン酸は、和牛の場合50%を占め、オレイン酸の融点は14度Cと低いことから、牛肉の口どけに関係していると考えられる。同じ脂肪量であってもオレイン酸の量により和牛香が変化するという研究結果もある」と説き「今後は脂肪量を増やすだけでなく、脂肪質を高めて行くことが、輸出振興の課題となるだろう」と見込んでいる。(岡安秀一)

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