ファストフード躍動 モバイルオーダー、新生活様式へ頭角
主要外食上場企業の4月度・既存店前年同月比実績(売上高)が出揃った(表1)。新型コロナウイルス感染予防の外出自粛によって大多数が大幅減収となったが、モバイルオーダー(MO)に先駆けたファストフード(FF)が躍動し、新しい生活様式に向けて頭角を現した(表2)。一方、三密を指摘された飲酒業態は休業や時短営業を強いられ、月次発表を見送る企業が続出するなど、外食史上最悪の状況が続いている。(日食外食レストラン新聞編集部)
躍動したのはテークアウト(TO)に強い全国チェーン(表2)。いずれも近年、スマホで受注決済するMOに注力してきたFFであり、今回の自粛を契機に「キャッシュレス・待ち時間ゼロ・大口受注」のMO効果を発揮した。同時に「感染リスク回避」と「巣ごもり特需」を両立させ、新しい生活様式に向けた「集客数減・客単価増・売上げ増」の外食モデルを示した。また自社便をはじめ出前館やウーバーイーツ(UE)と提携した宅配の活躍も目立った。
マクドナルドは、途中休業の約200店を含めながら売上高6.5%増と健闘した。昨年1月に着手したMOの全店導入が今年1月に完了。ドライブスルー(DT、約1500店)、宅配(780店)との相乗効果もあり、通常5割強のTO率が飛躍的にアップした。宅配は自社便のマックデリバリー(約330店)とUE提携(約640店)の両軸で展開。UE側ではマックの宅配人気に便乗する「マック地蔵」(マック店頭で待機するUEドライバー)が急増する珍事が起きた。またサムライマック、プッチンプリンとコラボしたシェイクの販促も奏功した。
モスバーガーは、3月末にMOの機能を強化。MO、DT、宅配の好調で通常5割強のTO率が約5割アップした。途中休業店(約100店)と時短店(約500店)を含めながら売上高3.7%増となった。
KFCは、「500円ランチ」に象徴されるフライドチキンの日常化戦略が依然好調な推移。注力商品のガーリックチキンも健闘。緊急事態宣言以降、客席閉鎖でTO限定、1~2時間の時短営業にもかかわらず、巣ごもり特需に輪をかけた。加えてクリスマスに偏重したMOを改良し、全店通年導入したほかDTと宅配も貢献した。
ほっともっとは、花見や催事の行楽需要が減りビジネス立地も苦戦したが、平日販売が好調。若年層向けに打ち出した春季割安商品が巣ごもりにマッチし売上高をけん引した。
吉野家は、4月からのTO15%オフ(牛丼・牛皿)が好調。通常約3割のTO率が約6割にアップ。2月に全店導入したMO、出前館とUEと提携した宅配も健闘。休業店を含めながら売上高4%減にとどめた(系列の京樽、はなまるは苦戦)。