江戸時代に人気の「こけら寿司」を兵庫の名物に Mizkan創業の赤酢を使用して復活
江戸時代に人気だった“こけら寿司”を完全復活させ、兵庫県の名物にしたいと有馬温泉観光協会が立ち上がった。15日に開いた発表会では、有馬温泉街内唯一の寿司店「有馬禅寿司」と旅館「御所坊」が舌と目で楽しめる令和版“こけら寿司”を披露した。
古くは1643年の文献に登場する“こけら寿司”とは発酵寿司を祖に、木材を削るときに出る細片の“こけら”を飯に混ぜ込む魚の切り身をそれに見立て、こけら吹きの屋根のように幾重にも重ねたような箱寿司。
薄く切った具をすし飯の上に敷き詰め、寿司箱の中で押して四角い形に整えたもので、寿司職人の間でも“技のいる仕事”が求められる。最も人気を博した大阪の心斎橋南にあった「福本鮓」のこけら寿司は、江戸時代の複数の文献や浮世絵にも描かれた。
現在は手軽さや回転寿司チェーンの台頭もあり、寿司と言えばにぎりのイメージが強く、技術が必要な箱寿司の存続が危ぶまれる上、兵庫県以外の近畿2府3県には名物寿司があるものの、兵庫に代表的寿司がないことも後押しし、同協会が“こけら寿司”復活プロジェクトを始動。
また、約1年前から大阪の食文化の一つとしてこけら寿司の啓発活動を進めてきたMizkan大阪支店も文献提供、江戸時代中期に寿司に使われていた同社創業の逸品「三ッ判 山吹」の赤酢で同こけら寿司を開発することに協力した。
発表会では「有馬禅寿司」がタチウオとカマスで2種類の具材とMizkanの山吹と白菊で2色のシャリ、「御所坊」は山吹で作ったシャリの中に椎茸と干瓢をでんぶで層を作った酢飯に明石のタイやタコ、あしあかエビや錦糸卵をあしらったこけら寿司をそれぞれ披露した。
形がきれいに整い、具材に生ものを使わない点も近年、有馬温泉に増加する海外観光客に好まれるとPRし、「有馬禅寿司」では1本税別2500円、「御所坊」ではコースメニューに取り入れて提供する。
また、大阪樟蔭女子大学と梅花女子大学の学生6人による“アーティスティックなこけら寿司”も表現され、復活劇に華を添えていた。