ディーゼル車向け尿素水が品薄 長期化すると食品などの物流に影響も

尿素水「アドブルーBIB(バックインボックス)」(日産化学提供)

尿素水「アドブルーBIB(バックインボックス)」(日産化学提供)

トラックなどのディーゼル車を走行させる際に必要な高品位尿素水(AdBlue)の原料となる尿素の品薄が続いている。市場の3割を占める中国からの尿素の原料となる石炭不足、国内メーカーの定期点検などが要因とみられる。インターネットの転売サイトでは、尿素水が高額で出品されているケースもある。現段階では、影響は限定的で、静観する向きが大勢だ。尿素不足が現実化すると、食料品や飲料に限らず物流全般が滞り、消費者への供給不足などの可能性もある。一方では「年明け以降も注視する必要がある」との声もあり、今後の混乱を懸念する声も聞こえる。

要因に中国の輸出制限も

尿素水は、ディーゼル車から排出される窒素酸化物を浄化するために使う。通常、尿素水はガソリンスタンドなどで、補給することができる。尿素水がタンクに入っていない場合、エンジンが動かないことがあることに加え、排ガス規制の基準を満たさないとして車自体が動かなくなるために、物流への影響が生じるとされる。

品不足の要因としては、国内メーカーの点検による操業停止に加え、中国における石炭をめぐる国際政治と経済が影響を与えているようだ。オーストラリアが、2020年秋以降、中国への石炭輸出をストップした。背景には「米中対立を受けてのもの」とする専門家の見立てに加え、中国自身が2021年10月から尿素、硝酸アンモニウムなど29品目について、輸出前検査を実施し、事実上の輸出制限措置に入った。「自国の農業保護にともなう措置の一環」(同専門家)との見解もある。

尿素は白い球状で、輸送時は粉体上の扱いになる(オリエンタルトレーディング社提供)

こまめにガソリンスタンドで補給

「トラックが稼働できない状況はない」と話すのは、東京都足立区で20台ほどのトラックを保有する石山運送の石山真一社長。同社は、飲料や紙の原紙などの荷物を関東一円に荷物を運ぶ。例年12月は繁忙期で「フル稼働の状態」(同社長)と話す。

同社は、昨年12月中旬に「(尿素水が)少なくなったら、こまめに(ガソリン)スタンドで入れるように」とのメールを社内の運転手あてに送った。石山社長は「ガソリンスタンドで尿素水の供給を受けることは可能で、価格の上昇の話もない」と冷静に説明する。「1月に入ると、(運送業界は)繁忙期からは脱する。その時点で、尿素水の供給状況は、安定するのでは」と付け加えた。

東京都内を走るトラック(イメージ写真・画像は一部処理をしています)

生産はフル稼働も…

一方、国内で尿素水の製造をする、三井化学と日産化学のメーカー2社の担当者は「生産をフル稼働で進めている」と口を揃える。品不足の要因の1つとして挙げられる、業界最大手の三井化学(本社・東京都港区)が昨年10月中旬から11月末まで点検のために同社大阪工場(大阪府高石市)の操業がストップした。同社は「フル稼働している。状況は1月には、改善するのでは」と不安視する声を払拭(ふっしょく)する。

業界2位の日産化学(本社・東京都中央区)も同社富山工場(富山市)で増産体制を続けている。「(尿素は)品薄」と話すのは市村大樹同社基礎化学品営業部担当部長。「生産は変わらないが、注文が急増していて、生産が追いつかない」とした上で、見通しについて「需給のバランスが、いつごろ戻るか先読みできない」と述べた。 

韓国で「余剰在庫」の話も

中国で製造される尿素を輸入する商社「オリエンタルトレーディング」山本恵司社長は、価格高騰の背景について「尿素の価格高騰の予兆は、2021年1月ごろから」とし「石炭、天然ガスの価格高騰、海上輸送費の値上がりも拍車をかけている」と説明する。さらに、中国が輸出に際し実施する検査態勢強化も一因に挙げる。「(自社で)12月に入って発注した尿素は、日本に現物が届くのは2月中旬ごろになりそうだ」と話す。中国以外にブルネイやマレーシアなどにも注文を出したが「入手は難しい」と悩ましい状況を話す。

また、国内の尿素水販売シェア1位の「伊藤忠エネクス」の担当者は「今後の供給は落ち着く向きもあるが、買いだめを懸念している」といい「落ち着くまで、新規の取引は今のところできる状況にない」と話す。

一方で、別の商社関係者は「尿素不足にあった韓国では、余剰在庫が出始めている。日本の品不足を知ってか『買わないか』と問い合わせがあった。在庫が適正価格で流通すればいいが…」と不安と期待をのぞかせた。

経済産業省は尿素の増産を国内メーカーに要請した。同省は「中国だけでなく、サウジアラビアなどからも輸入を進めていく」などとしている。また「転売による高額品は、手を出さないで」とも警鐘を鳴らす。最後に同省職員はこうつぶやいた。「ものは違うが、マスクの二の舞は避けたい」。