お帰りなさいアメリカ…国民食でコロナ禍収束をしみじみ実感【世界の食品CM】
60万人以上の死者を出したコロナ禍の終焉の始まり(?)を迎えている米国で流れている「アップルビーズ・ネイバフッド・グリル&バー」(Applebee’s Neighborhood Grill & Bar)のCM 。本当に長かったこの1年余り。子供たちも学校にも行けず、友だちとも遊べず、我慢を強いられた。やっと解放されてひと息つき、さあこれからは再び家族や友達といっしょにレストランで楽しく食事することができる。今までは当然のように思っていたこのことが、こんなにいいことだとは――
バーガーやステーキをクローズアップ
Eatin’ Never Felt So Good (食べることをこんなによく感じたことはなかった)の字幕の後ろに、ほかほかと湯気を立てるおいしそうな米国の国民食、バーガーやステーキのクローズアップが流れ、水滴のつくグラスに注いだ冷たいビールで祝う。
アップルビーズ・ネイバフッド・グリル&バーは1980年に第1号店がオープンしたカジュアル・ダイニングのレストランチェーンだ。バーガー、パスタ、チキン、サラダ、ステーキなど米国の主流の食事を提供している。キッズメニューもありながら、アルコール類も用意し、バーも併設しているから、家族連れだけでなく、大人たちだけの外食にもうってつけだ。しかも懐にやさしい価格帯。
Welcome back, America, It sure is good to see you!(お帰りなさい、アメリカ。再び会えて本当になつかしいね!)の締めくくりが何とも心に響く。今の米国の心境をぴったりととらえたこのCM。一日に何度も見るが、何度聞いても最後のフレーズは心に響きます。いやはや、この1年余りは、本当に長かった……。
曲のヒットでメニュー復活
アップルビーズのバーボンストリートステーキやオレオ・シェイクで祝うデートナイト。シェイクにはホイップクリームを絞り出して、ストロー2本♪―−いかにも「アップルビーズ・ネイバフッド・グリル&バー」のために作られたかのようなこの歌は、実は、CMに使われる前にすでに存在していた。
飾り気のない素朴さとノリのいいテンポが受け、ビルボードのカントリー部門でナンバーワンに。TikTokでも大ヒットし、そこに目を付けたアップルビーズがCMに起用したというわけだ。歌の中に出てくるオレオ・シェイクはもうメニューになかったが、この曲のヒットで復活。CMをよく見ると、ハワイのビーチやテキサスらしき牧場、ミッドウエストの農家などが出てくる。タレントを使わないCMがこれほど新鮮だとは。
ちなみに、歌っているのは、ナッシュビルのポップカントリーシンガー、ウォーカー・ヘイズ。このヒットで一躍注目を集めた。YouTubeではFancy Likeの全曲が聞ける。冒頭に出てくる男女2人が、実はウォーカー・ヘイズ自身と彼の娘さんだ。
それにしても「いつもはガールフレンドをウェンディーズに連れていくけれど、給料をもらったときは奮発してアップルビーズにアップグレードしてデートナイト♪」という歌詞内容に、ウェンディーズはどう思っていることだろう。が、アップルビーズ自体も、カジュアルダイニングでリーズナブルな価格帯。この飾りなさのおかげでヒットしたのだろう。(日食外食レストラン新聞 ニューヨーク駐在記者・外海君子)