愛知・明治用水の漏水から4週間 コメ生育に不安

農産加工 ニュース 2022.06.10 12413号 08面
ポンプを設置して取水を行う明治用水頭首工

ポンプを設置して取水を行う明治用水頭首工

 【中部】愛知県の中央を流れる矢作川(やはぎがわ)は西三河地域の経済発展を大きく支え続ける1級河川だ。この矢作川から農工業用水を取水する施設「明治用水頭首工」(豊田市)で5月中旬に大規模漏水が起き、全国のニュースでも取り上げられた。西三河にはトヨタグループ各社の本社・基幹工場が集積しており、生産停止や減産に追い込まれたためだ。食品業界としては、かつて「日本のデンマーク」と呼ばれ、今も国内有数の農業地域で取水ができなくなったインパクトは大きい。漏水後4週間が経過した現況を報告する。(横山卓司、宇佐見勇一)

 ●加工食品工場への影響は限定的

 明治用水に水を流すには、矢作川に堰(せき=流水を制御する構造物)を作って貯水する必要があるが、今回貯水場所の川底にパイピング(水の通り道)ができて水が流出した。頭首工を管理する東海農政局は、取水口付近などに約160台のポンプを設置して対応しているが現在も水量が不足している。

 特に稲作については、田植えの時期に当たり、今が1年で最も水が必要な時期だ。JAあいち中央(安城市)は、現段階で田植えは7日から10日の遅れとし、収穫時期が大きく遅れるとは見ていない。当面は「ブロック通水」(4地域に分割して順番に水を供給)開始に伴う通水状況の確認、田植え被害の状況の確認、用水量が少ない時の水稲作管理指導に取り組むとして静観の構えだ。

 ただ、コメを主原料にする食品企業は供給面など先行きを懸念している。杉浦味淋(碧南市)は、地元西三河で収穫するもち米とブランド米「あいちのかおり」で造る米麹でみりんを仕込んでいる。杉浦嘉信社長は「碧南市、西尾市の農家さんはまともに影響を受けている。実際、田んぼには水が足りていないし、今後の生育が心配」と打ち明ける。

 一方、加工食品を作る工場への影響は限定的だ。特に、岡崎市の醸造メーカーは市水(水道水)、安城市の惣菜メーカーは井戸水をそれぞれ多用しており、影響はないと断言している。

 愛知県水道部水道事業課工水維持グループによると、工業用水は明治用水経由で矢作川の水を利用するが、この工業用水は食品企業ではあまり使われないという。担当者は「機械の冷却や洗浄に工業用水を使っている企業は、水道や井戸に切り替えてコストが増えているが、操業を止める事例はない」と話している。しかし「農業や農作物に関係する企業への影響はまだこれから」と不安も隠さない。自然取水に向けての応急工事は着々と進むが、当分は油断できない状況だ。