#元気いただきますプロジェクトNEWS:菊乃井 生産者との縁を守る

外食 特集 2020.12.16 12160号 12面
太穴子寿司、劣化しない酢飯は博士課程で学ぶ、村田代表の子息が工夫

太穴子寿司、劣化しない酢飯は博士課程で学ぶ、村田代表の子息が工夫

村田吉弘代表

村田吉弘代表

 ◇農林水産物の販路の多角化推進事業=菊乃井

 ●医療サポート図り業界持続も

 京都の老舗料亭の菊乃井は、コロナ禍でも開店し続けて生産者との縁を守った。国産食材を食べて応援する「#元気いただきますプロジェクト」の一つ「ぐるなびFOODMALL」を活用し、自宅で楽しめる太穴子寿司といったテークアウト商品を開発した。市内宅配も始め、一般向けの公利経営に徹して、地元中心の客足が回復。文化功労者の村田吉弘代表は全日本・食学会の理事長を務め、弁当による医療、飲食店支援なども推進する。生産者の苦境を憂い、食品業界の継続と自給率向上、文化発展を果たす。

 菊乃井は大正元年の1912年に創業した、ミシュラン三ツ星の常連店。村田代表は食学会のほか、日本料理アカデミー理事長など各団体の要職を歴任する。13年の和食のユネスコ無形文化遺産の登録を主導。日本料理の魅力を世界へ発信してきた。

 新型コロナウイルス感染症を防ぐ、3月からの外出自粛にも京都本店、割烹の露庵、東京・赤坂など全店でのれんを下げ続けた。数人でも食べたいという人がいれば料理を出す、もうかるのと仕事は別と村田氏は指摘する。予約も1ヵ月前ぐらいからでき、普通の人にハレの祝いの日などに使ってもらえるのが本当の商売とし、生産者の販路も確保した。

 商売は三方良しで成り立ち、普段助けられている生産者との縁を切れば今後はない。「#元気いただきますプロジェクト」に賛同し、最大で実質半額で購入できる「ぐるなびFOODMALL」から多くを調達する。通販を強化し、太穴子などの棒寿司は低温でもコメがベータ(難消・老)化しない酢飯を新たに開発。地方にも発送する。

 店は日本にない米国、EU(欧州連合)の厨房規定をクリアして衛生、安全を優先。素材の厳選はもちろん、最新の調理技術、器具を追求して、料亭では上品で美しい料理、空間芸術の調和が楽しめる。外出、来店できない地元客にはタクシーの市内配達も行い、弁当の「家楽膳」も好評。利益は少ないとしながらも、コロナ共存のニーズに応じて集客につなげている。

 食学会では4月から、コロナ感染症を治療する全国の医療従事者へ弁当を約1万7000食提供。外食自粛に苦しむ飲食店に依頼して会で買い取り、寄付金などで賄う。業界を継承し、販売先として生産者を支援。健康価値などを強みに和食を世界の料理にし、国産食材の輸出拡大を加速する。国家を保つ自給率維持・向上を促す。(吉岡勇樹)

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