世界の人気食材 「ニンニク」辛味で食欲増進、強い殺菌力
昨夏は、ニンニクブームだった。ニンニクレストランには、二~三時間待ちの長い行列が続いた。このメニューをみると、ニンニクコロッケ、ニンニク炒飯、ガーリックピザ、タコのスペイン風、ニンニク醤油ドレッシング、ニンニクサラダなどと、ニンニクが主役。
今年も酷暑を乗り切るスタミナづくりに、ニンニクは大活躍が期待されよう。本来ニンニクは、スパイスの中で五指に入る貴重品である。この特性をみると‐‐
●独特の香りは肉や魚の生ぐささを消す
●辛味は食欲の増進に役立ち、どのような料理素材にもよく合う
●強い殺菌性を持ち、強精作用も大である
●ビタミン〓を持続させる作用があり、風邪防止などによく薬食としての効果が大きい‐‐など。
源氏物語には極熱の薬草としてニンニクが記され、この愛好者には薬いらず、医者いらずともいわれてきた。
ニンニクの原産は西アジアから南ヨーロッパにかけて、六〇〇〇年前のエジプトでも食べられていたという。地中海料理は、ニンニクを多用する。スペインのソパ・デ・アホ(ニンニクスープ)は、ニンニクとオリーブ油とフランスパンが主原料のスープ。また、有名なアンダルシア風の冷スープのガスパチョも、ニンニクとトマトなしではつくれない。特に、ソパ・デ・アホは庶民性が強く、湯を注げばすぐスープになるインスタント袋入りがスーパーで販売されている。
フランスのスープ・ア・ライユ(ニンニクスープ)は南フランスの人気メニューで、ニンニク、牛のブイヨン、オリーブ油、バターでつくる。卵黄をかきまぜて出来上がり。その他あらゆる料理にニンニクが使用され、南仏は一人一年で数十キログラムを消費する。
この両国を代表するソースにアイオリがある。ニンニクとオリーブが原料のため生まれた言葉で、ニンニクをすりつぶし、オリーブ油とレモン汁、卵黄、塩、コショウを加えたもので、冷製の肉用ソースとして使われる。
アメリカに行くとサンフランシスコの南部にギルロイ市があり、自らニンニクの首都と呼んでいる。数十キロメートルに及ぶニンニク畑が続く。ニンニクについての生産性の向上の研究や、新製品の開発や数百に及ぶ料理メニューを発表している。日本にも製品は輸入されている。
ニンニクの研究が進んでいるのは中国で、紀元前から食べられていたという。品種も非常に多く十数個の鱗片から、四~六個の鱗片まで、四川省では房に分かれていない丸いニンニクもみられる。
料理に使う鮮食以外、漬物や薬用にも利用し強壮保身の薬効が知られ、治せる病気は数十種もあるといわれる。特に油を多く使う料理が多いため、しつこさを抑える作用もみられる。非常に広い範囲で活躍する。スライスして乾燥した乾蒜(カンスアン)は貴重な食材である。
韓国の場合、ニンニクの使用量が一段と多くなる。代表的なキムチを始め、あらゆる料理に使われ、民族の味として、また民族のスタミナ源としての威力を発揮している。
和風料理でニンニクはあまり多く使われておらず、土佐料理のカツオのたたきぐらいであろう。しかし日本人の食生活も急変してきた。肉の消費が増大し、ニンニクの有用性が再発見されてきた。おいしさをつくる、スタミナの源、安価、ヘルシーで人気は急上昇である。