スパイスでおいしさ100倍アップ コンサルタント・朝岡和子さん

1996.06.17 103号 13面

少数精鋭、しかも省スペースの厨房でいかにバリエーション豊かな品揃えができるかは、市販のカレーをいかに自分のオリジナリティーの世界に引きずり込んで魅惑的なカレーに仕立てるか、名脇役をいかに揃えるかがポイント。たとえば野菜。夏ならカボチャ、オクラ、ナスなど“夏野菜”を取り上げて一つ一つのメニューにする。季節感を上手に演出すると店舗のイメージは一層アップする。

次に、最も大切だが個人差がありすぎて最も難しいのが辛さの調節。できあがったメニューの辛さが市民権を取った辛さでも、お客さんが自分で辛さを調節できる余地を残すことを提案したい。薬味でもたくさんの中からチョイスすることが食べることの楽しさにつながるように、辛さも辛みと辛さの風味を数種のスパイスでその場でアレンジできる仕掛けがあると楽しい。

お仕着せでない、お客に何かを働きかけるものがあり、お客の選択の余地、わがままの余地を残している飲食店に、最終的にグルメたちは到達するようだ。

そういう意味ではカレーだけでなく、ご飯ももっとこだわるべき。スパイスは薬膳の世界と同じ。体のために食べるので、ただおいしい、きれいというだけでなく、今日は疲れているからこのスパイス入りご飯をいただこう、今日は楽しみたいから、スタミナを付けたいから……と、体調も考えて楽しみながらチョイスできると、付加価値も倍増する。

(1)カレーの特徴=普通のカレーにガランマサラを入れて香りを出し、味を引き締める。

(2)提案のポイント=ナスは輪切りにして水か牛乳にさらし、水分をふき取って油で揚げる。フライドチリガーリック(ガーリックとチリをフライにしたもので香ばしくちょっと辛く胃を活性化させる)は白飯に振りかける。バターライスに入れて軽くソテーしてもおいしい。ターメリックは五カップに小さじ一・五杯、月桂樹一枚をいれる。全体を混ぜて炊きあげる。インドでは塩少々を入れる。水の半分をココナツミルクにしても良い。ほかにご飯の提案としてはパパイヤ、バナナ、パイナップルなどのカットフルーツを入れると新鮮。使用薬味グリーンマサラペーストとビンダルウペーストで辛さを自分流に調節の提案をしている。

(1)カレーの特徴=キーマカレーに月桂樹とシナモンスティックを入れる。

(2)提案のポイント=パスタはゆで上がったらオリーブオイルをまぶし、好みでハーブをまぶす。キーマカレーはトマトベースのさっぱりしたカレーなのでミートソース代わりに利用する。

(1)カレーの特徴=ココナツミルク入りのエビカレーと相性のいいカソーリメティを振りかけてエビのマイルドさ、柔らかさ、香を引き立たせる。

(2)提案のポイント=カレーに欠かせない炒め玉ネギを少し多めに作って、これに塩、フォンドボーを加え、クルトンの代わりにフリーズドライのディルウイドをトッピングしてさわやかさを出し、逸品に仕上げる。トッピングはマンゴチャツネとホットグリーンチリ。

「ナスカレーとご飯2種」。左からターメリックとクコの実ライス、フライドチリガーリックライス、グリーンマサラ、ビンダルウペースト

栄養士の資格を持ち、夫君朝岡勇氏(朝岡香辛料(株)会長)と二人三脚で良質のスパイスを求めて世界各国を渉猟、先人をきってスパイス料理の研究にあたる。一方で、スパイスコンサルタントとして雑誌、テレビ、講演で活躍。暮らしに優しいスパイスをモットーに料理、医薬・化粧品、グッズに生かす新しいスパイスの使い方を提案し続けている。今年2月に発行した夫婦著の「日曜日の遊び方、スパイス名人宣言」(雄鶏社)が好評。

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