大手企業形成期に入った宅配ピザ業界 生き残り賭け揺れる(2)
では、現在はどのような状況にあるのか。宅配ピザ業界は、第一次~第三次戦争を通して、シェアを確立し業界トップ企業となり、確固たる地位を確保するための競争であった。現在の状況をみると、そのトップ争い、リーダー争いの最終段階にあるように思える。別な観点からみれば、いわゆる業種業態の成長期の最終コースに差し掛かっているということだ。急成長期はあと四~五年とみる向きが多い。
たとえば、現在四〇〇店舗を展開、宅配ピザ業界のトップに立ったピザーラの浅野秀則社長は、「九七年2月期までに四四〇店舗にし、九八年2月期には五〇〇店舗にする。二〇〇〇年には黙っていてても七〇〇店舗にはいくだろう。ただ、その先どうなるかこれからの検討課題」とし、小型のビジネス・パッケージを開発して小商圏立地や地方への出店をするか、コンビニなど異業態と組んで新しいビジネスを創造するかは未定だとしている。
また、前期末に一三六店舗八八億円の規模に達したピザハットでは、九六年11月期には二〇一店舗一二八億円にする計画で事業が進んでいる。同チェーンの意向を聞いてみると、現在のパッケージで二〇〇〇年までは急成長させるということだ。
このようにみてくると、業界関係者は二〇〇〇年あたりまでを成長期としてとらえ、それまでがシェア(=安定した地位)獲得の猶予期間と考えているようだ。
そこで少し大胆な予想を記してみると、業界大手グループを形成するのは、ピザーラ、ピザ・カリフォルニア、ピザハットの三社、準大手グループにはストロベリーコーンズ、シカゴピッツァファクトリー、ドミノ・ピザ(同社はFC展開していない)の三社、中堅企業にピザ・ウイリー、ピザ10・4(ピザ・テンフォー)などがリストアップされるのではないだろうか。
もちろん、このほかにも地方でドミナントを形成するチェーンもいくつか存在しよう。しかし、そうしたチェーンは地方では強いものの、宅配ピザ業界全体に影響を与えるだけの力は持つことができないのではないかと思われる。
今年に入ってからの各宅配ピザチェーンの動向を見てみよう。
いちばん目立つ動きは、何といっても出店の加速ということ。大手チェーンは前年度と同じかそれ以上のスピードで出店を計画しているし、地域的にもピザーラやストロベリーコーンズは関西圏への進出を本格化している。中堅チェーンのピザ・リトルパーティーも、従来の年間三~六店舗の新規出店ペースを一〇~一五店舗に加速、九九年3月期までに現在の三倍にあたる一〇〇店舗を目指すとしている。このほか、宅配ピザでは出遅れていたシェーキーズ(店名はシェーキーズダイヤルレストラン)も年間七~一〇店舗のペースで出店していくことを明らかにしている。
出店を加速する動きは、小商圏向けの小型店の開発、あるいは初期投資の削減をしたいわゆる低コスト店の開発が進んだことによる。たとえば、ピザハットは一店舗出すのに従来は三五〇〇万円前後かかっていたが、今は二七〇〇万円前後にコストダウンされている。ピザ・ウイリーやテキサスハンズなどでは、初期投資が一〇〇〇万円~一五〇〇万円という小商圏向けの小型店で地方に進出を図ろうとしているといった具合だ。
宅配ピザ業界のもう一つの大きな動きは「メニューの複合化」。その典型的な例が、ピザ・ウイリーが導入した弁当と中華料理。ピザだけではなく、弁当や中華料理まで宅配サービスしようというものだ。ミスターピザジャパンも弁当を導入したし、ピザ・カリフォルニアもパエリアを扱い始めた。シカゴピッツァファクトリーもサンドイッチを実験導入している。いずれも一店舗当たりの売上規模を増大させることが狙いだが、これらの試みが新しいマーケットを切り開くかどうかはもう少し様子をみないと判断できない。
ちょっと心配なのは、過去の事例、たとえばマクドナルドやケンタッキーフライドチキンが急成長している時期は、あまり浮気をしなかったということ。浮気をしたチェーンは結局大きくなれなかったということだ。本業一本で、メーンの商品に徹してマーケットを掌握していった方が大きく成功できるということではないだろうか。
(FCコンサルタント・多田和如)