食の空間を“祭り”に 話題の店 洋酒天国「パオ」遊牧民の気分を満喫
直径五m、高さ三m五〇センチメートルの堂々たるパオを屋内に入れ、レストランとしているのが洋食天幕「パオ」だ。
日本にいながらにして異国気分が味わえる店として固定客を増やしている。
オーナーの吉田勝貞氏が中国・新彊ウイグル地区を旅行中、パオに出合ったのが八年前。
彼ら遊牧民が生活の拠点としているパオを、日本では店舗として使えるのではと思い付き、機材を輸入した。当初のパオは、オーナー所持の敷地内に設置。組立所要時間は、この方面に明るい現副社長のアドバイスで約五時間。
ウイグル地区のパオは、モンゴルと違い柱を立てず、天蓋の明かり取り以外釘を使わない。骨組みは、すべてラクダの革紐、綿の帯紐で固定されている。
パオはもともとが乾燥地帯の住居。湿気の多い日本の気候には合わず損傷をきたしたため、パオの下に台を置く高床式に改造、「八年になるが、大きな痛みはない」という。
このごろの客層は、中近東などを放浪する仲間内的な二〇~三〇歳代の男女で占められ、金銭的にもドンブリ勘定だった。
五年前、オーナーの突然の入院により、副社長はじめスタッフ一同が一丸となり、店の建て直しを図る。
「パオを柱に、切り離せない関係にある羊をメーンメニューに据えた」新コンセプトでの再スタートだ。
羊料理を得意とするシェフの味を慕う人、エスニックな雰囲気大好きな人など口コミで客層も広がる。
年齢層も三〇~四〇歳代後半の男女へと広がり、使われ方も二次会、歓迎会、帰国祝いなどパーティー風が多くなる。
このため、パオを予約客だけとし、新たな客層を取り込むために、今年7月、オープンエア風ビアガーデン「バザーリ・パオ」を増設した。新店は、中近東のバザール内にあるチャイハナといった雰囲気。
客席からはミニバザールの絨毯などが目に入り、自由に買うことができる複合店舗にしている。
「バザーリ・パオ」に来店し、予約制「パオ」を知り予約を入れるケースが増えつつある。
◆洋食天幕「パオ」=東京都中野区東中野二‐二五‐六、 03・3371・3750