インサイドレポート 転機のアイスクリーム市場 店売り固執のサーティワン
米国から日本市場にアイスクリームのチェーンビジネスが上陸して、すでに二〇年以上になる。今ではハンバーガーやドーナツ、フライドチキンなどと並んで“ファストフード商品”として定着しており、チェーン店を多く街中で見かける。しかし、このチェーンビジネスも市場は大きく成熟してきていることに加え、同業他社とのライバル関係、コンビニやスーパーなどとの競合も高まってきていることから、店舗出店には消極的な雰囲気だ。事実、ホブソンやハーゲンダッツといったかつてアイスクリーム旋風を巻き起こしたチェーンは、現在は目立った出店もなく、鳴りをひそめた状況だ。だが、店舗出店に活気はなくても、店舗売り(イートイン)を離れてのデリバリーや注文販売、コンビニやデパートなどへの卸売を積極化しており、もはやショップセールスのチェーンビジネスとはいえない側面もある。本稿ではかたくなにショップ売りを展開するサーティワンアイスクリームと、ホールセールスに力を入れているハーゲンダッツの二社に的を絞って、アイスクリームビジネスの現況を取材した。
平成8年12月の業績予想は売上高六一億五〇〇〇万円、経常利益四億八〇〇〇万円、純益二億六〇〇〇万円だが、売上げ、収益ともに顕著な伸びは期待できない見通しだ。しかし、それでもサーティワンの市場戦略は、店舗売り(イートイン)に固執する。
「たしかに、消費者も店を利用することの慣れから、エキサイティングな気分を失っている面もあると思いますが、店で食する楽しさはなくならないと思います。問題は来店動機をどう喚起していくか、移り気な消費者マインドにどう対応していくか、この点に尽きると思うのですが、商品開発や営業ソフトの面でもいろいろと工夫、努力はしてきているのです」(前出渡辺マネジャー)
サーティワンのアイスクリーム商品は、良質の自然素材を使った季節のものや定番のフレーバー五〇〇種以上の中から、ストアブランドの通り一ヵ月三一品目(二〇〇~五二〇円)を提供、他店にないバリエーションを訴求している。
商品はアイスクリームほか、サンデー、パフェ類。利用形態はイートイン七、テークアウト三割。客層は一〇~二〇代の若い女性と三〇~四〇代の主婦やファミリー。客単価は六〇〇~七〇〇円前後。
商品のバリエーションといえば、サーティワンは、商品提供がマンネリ、陳腐化しないよう常に活性化することにも取り組んでいる。
9月1日から提供しているのは、ブームチョコラカラカ、ストロベリー、ハニーバニラクランチ、ミックスベリーメドレーのチョコレートやストロベリー、ラズベリーなど果肉入りのハードタイプのフローズンヨーグルト四種(各二〇〇円)。
また、10月から導入予定のクリーミーなアイスクリームとフレッシュフルーツを使ったアイスクリームパイ(ホームサイズ三種)各二三〇〇円、八分の一サイズ各二〇〇円は、アメリカにも出回っていない日本だけのオリジナル商品だ。
これら商品導入に加えて、店舗の集客、収益力を向上させるため、契約期間六年を過ぎた加盟店については、設備リース額を二割漸減させるほか、販売奨励策として商品(バルク)仕入れを五%削減。また、加盟店が複数出店の場合は一定額の褒賞金を出すなど、あの手この手の多様な店舗支援策を導入、「ストアセールス」にこだわっている。
◆会社概要
・企業名/B‐R(バスキン・ロビンソン)サーティワン・アイスクリーム(株)
・チェーン名/サーティワンアイスクリーム
・会社設立/昭和48年12月
・本社所在地/東京都品川区上大崎三‐二‐一、目黒センタービル四階(Tel03・3449・0331)
・資本金/六億七五〇〇万円
・代表取締役社長/松山和夫
・従業員数/一〇八人
・出店数/直営二五店、FC三〇八店、合計三三三店(平成7年度)
・売上高/約一一〇億円
(店舗売り全体=平成7年度、前年比一二%減)