低価格時代の外食・飲食店 「サッポロライオン」

1997.03.03 122号 5面

サッポロライオンは九六年期末の店舗数で、直営一九九店、FC二〇店の計二二〇店弱を出店するが、九六年度は新規に一六店を上乗せした。今年九七年度は出店をややセーブするが、それでも一〇店舗を展開する計画だ。

アサヒビールシステムに比べれば、出店意欲は旺盛だ。サッポロライオンは新業態開発とも積極的に取り組んでいる。

ギネスビールの樽詰めを売り物とするアイリッシュパブは、一、二年前からの展開で東京二店、神戸一店舗を出店するが、今年5月には大阪(ミナミ)にも展開する計画だ。

店舗面積一二〇坪、客席数約二〇〇席。アサヒビールシステム本拠地の大阪、それも大阪一、二位を争う繁華街での出店だ。同社の出店意欲を物語る店舗展開といえる。

昨年7月末に発表した九六年度中間決算では、不動産部門(三%)を含み売上高一四四億〇九〇〇万円(前年同期比八・七%増)、経常利益四億四四〇〇万円(同一二六・九%増)という結果を出している。

九六年度通期の業績では売上高三〇六億円(前年比七・六%増)、経常利益一〇億円(同四二・六%増)、利益四億円(同三八・九%増)を予想している。

アサヒと比較すると、売上高で三・六倍、経常七倍、利益一〇倍という数字だ。これはあくまでも予想数値だが、結果が出たとしても大幅なブレはないだろう。

バブル経済破綻後、九五年度まで進めてきたリストラが、大きく実って増収増益の結果を出しているのだ。

攻めと守り。同社の事業展開は常に二点軸での考えを貫いている。ポストバブル経済の外食ビジネスは、市場の伸びが大きく鈍化しており、その中にあって競争・競合はすでに恒常化している。

同業他社ばかりがコンペティターではなく、異業態、特にビアホール、ビアレストランにとっては居酒屋チェーンも強力なライバルの存在なのだ。

需要が拡大しなければ、集客力を高め、コンペティターの“シェア”を切り取るしか生きる道はない。

躍動感のない企業はやがて衰退して、市場から消滅する。物販的なハンバーガー商品と、アルコールレストランサービスとは簡単には比較できるものではないが、ハンバーガーチェーンのマクドナルドは、同業他社のシェアを切り取る出店戦略と価格政策(大量出店と低価格商品の導入)で、独自のシェアを拡大し続けている。現在の二〇〇〇店、三〇〇〇億円の企業規模から、西暦二〇〇〇年を目標に五〇〇〇店、五〇〇〇億円の事業プランを掲げているのは周知の通りだ。

マクドナルド藤田田社長の大ボラとしても、トップが熱ければ、組織はおのずと活性化し、社員もやる気が出てくる。

攻撃は最大の防御ともいう。企業が存続していくためには、創造とチャレンジ精神は不可欠だ。

サッポロライオンは、九五年から“一店一品運動”を展開している。これは各店でオリジナルメニューを提供するというものだ。

店舗が拡大すれば同一食材、画一メニューというのは生産性や効率の面から避けられないことになるが、企業の論理、店側の都合ばかりでは客は納得しない。

オリジナルメニュー一品というのは少ないが、しかし、それでも店サイドのメニュー開発は店舗スタッフのやる気を喚起する。

酒のつまみが陳腐では客に飽きられる。メニューの改善・開発は、店舗運営においてはより重要なことだ。

サッポロライオンは昨年末に「商品開発委員会」を設置した。メニューがマンネリ化しないよう、食材仕入れと一体化させて、常に新たなメニュー開発と取り組むという姿勢だ。

食材確保については、昨年はニュージーランドからのミルクラム、アトランティックサーモン、岩手県産の地鶏、鹿児島県産の黒豚など、仕入れ機能を強化し、メニュー作りを徹底している。

調理師を生かした手作り感覚の料理提供、メニューの絞り込みと、共通メニュー「戦略一〇種」の特化など。内に外にサッポロライオンの経営は積極的で多面的なのだ。

◆会社概要

・企業名/(株)サッポロライオン

・チェーンブランド/ビヤホール「銀座ライオン」、ビヤレストラン「サッポロジョイプラザライオン」、和風ビヤホール「和風ライオン安具楽」、ほか

・創業/明治32年8月

・会社設立/昭和24年9月

・本社所在地/東京都中央区銀座七‐一〇‐一(Tel03・3572・2291)

・資本金/四三億二八一九万円

・代表取締役会長/長澤猛

・代表取締役社長/山根義夫

・従業員数/七四七人

・事業内容/ビアホール、ビアレストラン、ブラッスリー、ケータリング、ほか

・出店数/約二〇〇店(直営のみ)

・売上高/三〇六億円(九六年12月期予想)

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