これが21世紀の野菜だ にっぽんの植物工場(11) キノコ工場

1997.04.07 124号 23面

身近になったキノコ、現在の日本では椎茸、エノキダケ、ブナシメジ(ホンシメジの名称でよく売られているが、本当のシメジではない)、マイタケなどいろいろな種類が年間をとおして販売され、今や食材として欠かせないものになっている。

このように、キノコが一年中手軽に食べられるようになったのは、比較的近年のことで、キノコの工場的な生産が行われるようになって初めて可能になったもの。

キノコはもともと森や原野に自然の環境が整ったとき発生し、これを採集して食用としている。

現在でも、キノコ狩りが森林に近い地域で盛んに行われているが、このような自然まかせでは収穫時期が短くて、生産量も安定しないため、市場で流通されるにはとても合わない食材だった。

このため、人工的な栽培環境のもと年間をとおして大量にキノコを栽培する方法(不時栽培=キノコ発生の時を選ばないという意味)が研究され、その結果、現在のキノコ工場の誕生となった。

作り方は、優良な品種のキノコ菌を選びバイテクなどの手法で優良で均一な種菌を大量に作る。

この種菌をオガクズとコメぬかなどの栄養分を混ぜ、取り扱いやすいようにびんやプラスティックの袋に詰めて殺菌した栽培床(菌床)に植え付ける。

この栽培床をキノコの発生に適した温度や湿度(キノコの種類により条件が変わるが、一般には自然のキノコが発生する秋の気候に準じた温度一〇~二〇℃、湿度六〇~九〇%)にしておくと二~三ヵ月後にキノコが発生する。

このように菌床を利用することにより、取り扱いやすく、形状が一定になるため、大量生産のための自動化が行われ、温度や湿度を一年中最適に調整することで工場設備化が可能になり、一般の消費者にも一年中食べることができるようになった。

現在、人工栽培できるキノコは、本来枯れた木に発生する腐朽菌といわれる種類のキノコが中心。生きた木の根などにしか発生しない菌根菌といわれるマツタケやシメジは、現在のところ、まだこのようなキノコ工場では生産できず、工場生産するための研究が続けられている。

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