世界の人気食材 「デーツ」砂漠の国の健康食 乾燥果実

1997.06.16 129号 21面

デーツは五〇〇〇年以上前から存在していた最も古い果実の一つ。神がアダムをつくり、アダムの肋骨からイブをつくったとき、残った土を固めて息を吹きかけるとデーツができたと、旧約聖書に記されている。

デーツは日本ではナツメヤシと呼ばれているが、この原産地はイラク、イランなど砂漠に近い乾燥した熱帯地域である。

日陰のない砂漠地帯で、デーツは食物としてだけでなく、その茂みはオアシスと呼び、キャラバンの休憩地として極めて重要な役割を持っている。イラクなどアラブ地方の人々は、デーツと羊肉とパンのホブサさえあれば生活ができるというほど、日常生活に欠かすことができない。

デーツは高さ二〇~三〇mに成長し、長さ五m以上の鳥の羽に似た葉を何枚も出し、美しい外観である。開花期に雨が降ると結実しない。このため東南アジア諸国ではみられない。

現在の生産地は中近東、インド、パキスタン、北アフリカ諸国で、主産地はエジプト、イラン、イラク、北アフリカ、アメリカなど。特にアメリカの生産量は急伸している。

品種は意外に多く、主食向けのでんぷんの多いデーツ、実として味の良いデーツ、乾燥して糖分の多いデーツなどさまざま。外観も長め、丸形など。三~六㎝と長さもまちまち。一本の木から収穫量も一〇〇㎏を超すものもみられる。

成分として、乾燥品(一〇〇g当たり)は糖質が六一%と多く、次いで水分三三%、タンパク質二%、繊維二%、灰分二%など。ミネラルではカルシウム八〇mg、鉄三・八mg、カリウム七一〇mgなど。ビタミンではA、B1、B2がみられる。二三五Kcalである。

プルーンと同様に日本人の不足しているカルシウム、鉄の供給源として望ましく、またカリウムも多く含まれている。中近東の人々のスタミナ維持に効果的といえよう。

特に砂漠地帯では羊肉やパンを主食とし、野菜が不足する。便秘しがちな生活となるが、食物繊維の多いこと、酵素が多く自然の妙薬として便秘を解消する。

このためアメリカのヘルスショップをみると、売れ筋として(1)トレイル(各種ドライフルーツのミックス)(2)デーツ(3)プルーン(4)アプリコット(5)バナナチップス――となり、人気度はプルーンを上回る。いかに効果が高いかが理解されよう。

デーツは生食や生干ししてもおいしく食べられるが、乾燥果実として流通されている。日持ちが良く、一段と甘みを増し食べやすくなるのである。

乾燥果実は非常に広い用途を持っている。したがって生産国は、輸出アイテムとして外貨を稼いでいるが、主用途は砂糖原料、製菓原料、アルコール原料、ソース原料となる。

菓子やジャム用にも使われるが、あんにすると、ナツメ同様に素晴らしい特性を持ち、アズキあんよりも風味が高くなる。あんパンや中華あんまん用に向く。

デーツを刻んでパンやクッキーに混ぜると、レーズンにも優るとして固定ファンがみられる。プディングやアイスクリーム用にも使用され、はちみつ代用のシロップになる。

日本ではデーツの甘さを利用して、たこ焼き用やお好み焼き用ソースにも使われ、量的にも多く、相当量の輸入がみられる。

デーツからつくるアラックは、日本の焼酎と同じで庶民の酒となる。すべて味が良く価格も安い。健康を守る食品の王者の貫禄を持つ。

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