飲食店成功の知恵(7)開店編 チームワークはルールづくりから

1992.10.05 13号 2面

夫婦二人だけで営業するいわゆるパパママ店は別にして、小規模店といえども普通は従業員を雇う。そして往々にして、最近のアルバイトは使いづらいとか、なかなかいい人が集まらない、とグチをこぼす。

こういうお店は、特に経営者と話をしなくてもすぐに、それと分かる。なぜなら、お店の人達のチームワークがとれていない。サービスの作動や接客態度、そして従業員同士の動きがバラバラで、まとまりがないからだ。だから、繁忙時などは従業員の動きにムダが多いし、カリカリしているのがお客に伝わってしまったりもする。

なぜこんなことになるのか。それは、お店の中にきちんとしたルールが確立されていないからである。二人以上の人間が働くのにルールがないのでは、チームワークが生まれるはずもない。そして経営者はといえば、従業員の資質のせいにして、ただ嘆くばかりである。これではいつになってもサービスは向上しないし、お客離れが進むだけである。従業員のチームワークのとれていないお店ほど、お客にとって居心地の悪いところはない。

こういう轍を踏まないために、次のことを是非とも理解していただきたい。それは、お店とは生活環境の違う人達が寄り集まってできた、新しい家族の場である、ということだ。

つまり、それぞれ考え方も価値観も違う人達が集まっているわけだ。よく

「まったく常識がないんだから!」

といった注意の仕方をする経営者や先輩従業員がいるが、これは基本的に間違っている。常識がないのではない。“常識”の中身が違うだけなのである。ましてや変化のスピードの速い現代、はるかに世代の離れた若い人をつかまえて、自分の“常識”とやらを押しつけても、かえって反発されるのがオチだろう。誤解してはいけないのは、どちらが正しいとか正しくないという問題ではない、ということだ。

逆にいえば、このお店での“常識”とはこういうことなのだということをきちんと教えることで、このようなトラブルは未然に防げるものである。こんなことはどんな社会でも“常識”なのだが、飲食店はどうしても狭い世界なので、当たり前のことが見過ごされやすい。もっといえば、ふだん私達が気軽に口にする“常識”とは、そんな程度のことなのだと、謙虚に反省すべきなのである。

ルールを作ることは確かに大変なことだ。しかし、それを作ることによって日常の仕事がスムーズにいくのであれば、是非とも作らなければならない。就業規則とかマニュアルというとすぐに、そんなものは大手企業の話で、小規模店には必要ない、と考えてしまう人が多いが、そういう思い込みは即刻、捨てていただきたい。ルールは複数の人間が働くために必要なのであって、人数には関係ないのである。

ところで、ルール作りにあたって最も大事なことは、それによって働く人達が辛いとか、過度に厳しく縛りつけられていると感じるようではダメだ、という点である。あくまで、皆が働きやすくするためのルールでなければならない。ルールはただ押しつけるものではなく、理解してもらうことに意味があるのだ。

さしあたって必要なルールは①就業規則②店舗の運営マニュアル③清掃マニュアル④接客マニュアル⑤調理マニュアル⑥店長マニュアル‐‐などである。個々の作り方については後日、項を改めて解説したい。

フードサービスコンサルタントグループ

チーフコンサルタント 宇井 義行

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