飲食店成功の知恵(118)繁盛編 うどん二毛作のお店
うどんはそば店でも出すが、ここではうどんの専門店に限って考えてみよう。
言うまでもなくうどんは、そばと同様に日本の代表的な伝統食である。一般に東京・関東はそば、関西はうどんといわれているが、実際にはうどん圏は全国といっていい。関東でも伝統的なうどんの名産地はたくさんある。つまり、うどんの需要はそば以上に幅広くあるわけで、うどん店は絶対になくならない業種の一つでもある。
しかし、関東でのうどん店の現状はあまり芳しくない。本来ならうどんは、老若男女だれにも好まれるヘルシーな食べ物なのだから、極めて客層の幅広い業種のはずである。ところが、たいていのうどん店は中年以上がお客の中心になっていて、特に若い人たちや女性客を取り込めないでいる。
まず見直さなければならないのは商品である。関西の人たちがよく指摘することだが、うどん自体の品質に最初の問題がある。お店の側は品質を高めるのはむずかしいと思っているようなのだが、実はそんなことはない。例えば手打ちにするとしても、技術はそばに比べてずっと簡単に習得できるし、製麺機もしっかりとしたものを導入すれば手打ちと遜色のない麺が出せるのだ。
もちろん、材料にももっとこだわる必要がある。小麦粉はもちろんのこととして、特につゆの材料である。うどんはそれ自体の味がシンプルなため、つゆも具の味で大きく左右されてしまうのである。
商品としてのオリジナリティーが足りないことも指摘しておきたい。シンプルな味のうどんはそばと違って、いろいろな素材との組み合わすことができる。スパゲティやサラダ感覚、中華風も思いのままだ。奇をねらえばいいというものではないが、工夫次第でいくらでも個性的なメニューを開発できるということだ。
食事としてのごちそう感やボリューム感に欠けることも、弱点の一つである。そこで私は、天丼やすしなどとのセットメニュー化をすすめているが、最大のウイークポイントである夜の時間帯はそれだけではカバーすることができない。そこで必要なのが二毛作である。昼はヘルシーな食事としてのうどん商品を売り、夜はレジャーとしてのお酒を売るのである。
ただし、夜に関しては客層を絞り込む必要がある。居酒屋をのぞいてみれば分かることだが、最近はブームのころと違って客層のすみ分けが進んでいる。うどん店が取り込みやすいのは中高年の客層だ。もともとうどん店に親しみのある世代だけに無理がない。
また、専門店である居酒屋と競合するのだから、メニューづくりには工夫がいる。例えば、私がパッケージ化したモデル店では、おでんや焼き鳥中心の、和風のさっぱりメニューを開発している。もちろん価格は居酒屋よりも安く設定しているが、ただ安いだけのお店ではない。
大人にふさわしい落ち着いた雰囲気で、しかも気軽にポケットマネーで利用できる。これが、このお店の売りなのである。安いだけなら赤ちょうちんもあるが、居心地感がよくなかったりする。そうかといって雰囲気を優先すると高くついてしまう。そういうすき間のニーズをねらった業態なわけである。
したがって、雰囲気づくりも接客サービスの仕方には配慮が必要になるが、これは昼の、ごちそう感のあるうどん店としても不可欠の要素である。
うどん店の売り方はこれまで、おざなりすぎたといっていいだろう。生業店のため経営体質が甘くなりがちで、時代の変化に取り残されてしまったのだ。うどん店だからこうあるべき、などということはない。いま一番必要なのは、お客へのアタックである。
(フードサービスコンサルタントグループ チーフコンサルタント 宇井義行)