多様化するテイクアウト寿司 「京樽」直営で800店舗、食材は11工場から直送
前記の小僧寿しチェーンが徹底してモノパターンのテイクアウトすしショップを展開しているのに対し、京樽は懐石料理の店をはじめ、ファミリーレストラン、江戸前すし専門店、テーマレストラン、テイクアウトすしショップ、中国料理店(ファミリーレストラン)ほか、ケイタリング、機内食供給と多様な業態を展開し、国内有数の総合レストラン企業としての地位を築いている。
九一年度の業績をみると、京樽グループとして総店舗数は七九七店、売上げは約八七〇億円(前年比八・七%増)という内容で、日経流通新聞の売上げランキング(第一八回日本の飲食業調査)によると、一三位と上位ランクに位置している。(小僧寿しは九位)。
同調査による上位ランキングはファーストフードチェーンやファミリーレストラン、テイクアウト弁当チェーンが大半を占めているので、総合レストランとしての位置づけにおいては、セゾンフードやダイエー外食事業部に次ぐトップグループのランキングにある。
京樽は創業六〇年の歴史。昭和七年、京都・河原町で割烹料理店を開業したのがその始まりであるが、その後、東京に進出して茶きんと上方すしの出店を開始した。
今では前述したとおりに業態を拡大し、日本有数のレストラン企業としての独自の市場を築いている。
もっとも、総合レストラン企業とはいうものの、全体の売上げ構成比をみれば、テイクアウト六〇%、イートイン四〇%という内容で、見方によっては、京樽はすしのテイクアウト企業という側面を秘めている。
すしのテイクアウト事業には、「京味燈(きょうみとう)」(懐石料理と高級すしの持ち帰り)、「関山(かんざん)」(日本古来の素朴さ、ふるさとをイメージしたすし商品)、「きふね」(中級品的なテイクアウトすし)、「デリカきょーたる」(和製ファーストフード的なすしショップ)といった主力の業態があるほか、平安朝の“雅とやさしさ”をイメージした「六歌仙」や「花式部」など、価格帯や客層をゾーニングして、多様なスタイルのテイクアウトショップをチェーン化している。
そして、これらテイクアウト事業の中でも、大きなウエイトを占めているのが、茶きんと上方すしの「京bM」で、店舗は北海道から九州まで四一四店、テイクアウト事業全体売上げ比六九%と、京bMグループ全体からみても、大きなウエイトを占めている。
京樽に次ぐウエイトは「関山」他一三%、「きふね」一一%、「デリカきょーたる」七%の順で、数字の上からも京樽のウエイトの大きさが理解できる。
いわば、テイクアウト京樽は、京樽グループのドル箱的業態ということになるわけであるが、テイクアウト京樽は年間四、五〇店のペースでチェーン化を進めてきており、平成七年には五〇〇店舗台のチェーンスケールになる見通しにある。
この立地戦略は、デパートや駅ビルへのテナント出店をはじめ、商業ビル、主要幹線道路沿いでの出店で、イートイン店にテイクアウト機能を付加するという出店形態も多い。
テイクアウト機能単独店の場合は、店舗面積五~一〇坪前後、メニューは茶きん、かんぴょう巻、いなり詰合せ、おむすび弁当などといったもので、価格は一折り四〇〇円台から一〇〇〇円、三〇〇〇円前後まで。
客単価は平均して九九〇円。この消費単価はデリカきょーたる九〇〇円、きふね九二〇円、関山一六五〇円と比較すると二番目に高い。
各店舗への食材および包材供給は、すべて国内一〇、海外一の計一一工場の自社のCK(配送センター)からダイレクトにおこなっている。
このほかには、クリーンな食材弁当から品質の検査まで、京樽のレストランビジネスは完璧を極めているのである。