10年後を見据えた飲食店の課題 ホテル飲食店=活路は地域社会との密着

1997.12.15 142号 8面

わが国のホテルが誕生してから約一世紀になり、施設、設備、機器、什器備品類などのハード面も大きく様変わりしてきた。また、ソフト面やヒューマンウエア面も進歩し、ホテルがお客を満足させる二番目の要素である人、接客、三番目の料理、四番目の情報も著しい変化を遂げている。

通常都市ホテルと呼んでいる条件としては、宴会場、レストラン・バー、宿泊という三施設を持っていることといわれている。ある程度の規模を持った都市ホテルの全体売上げを一〇〇とすると、約六〇~六五%の売上げを料飲部門が占めている。

このように大きな売上げを上げているにもかかわらず利益が低く、収益性が良くないという問題を抱えているのも現状である。特に宿泊・宴会場の売上げを大きく伸ばしていくのが困難な時代になり、レストラン自体も大きな問題点と課題を抱えていることから、以前にもまして売上げや収益性が問われてきている。

都市ホテルは地域社会のコミュニティー空間であり、人と人との相互交流を動機づけるような装置が必要である。このことを考えると「ホテル内レストラン」は、地域社会の利用を高める絶好の施設であり、もっともっと地域生活者に支持される施設としなければならない。地域のレストラン利用を促進させることは、ホテル全体の利用にもつながり、活性化となる。

レストランは製造業としての側面を持ち、料理を商品として製造し販売している。客室には、その商品にあたるようなものがほとんどなく、施設の快適さとその利用価値を時間いくらで売っている。

現在ホテル経営の中で一番むずかしい分野がレストラン部門であり、対応に苦慮している。最近特に、地域生活者は、ホテルのレストランに対してあまり魅力を感じていない傾向が強くなってきた。郊外のレストランの方が利用者の満足を引き出す力が強く、比較的安く、おいしく、楽しい体験をさせてくれる場合が多い。

環境が大きく変化してきているのにホテルはうまく対応できず、ホテル内レストランは一般的に採算性が悪く、悩みの種になっているのが現状である。

ホテルのレストラン経営の難しさは、朝・昼・夜のニーズが大きく違うことにも起因している。

お客様が遠くから来る場合と近くから来る場合とでは、利用目的も違ってくる。一般的に、遠隔地の旅行者は商用旅行者と観光旅行者に分かれ、近隣地域住民は地域商用と地域レジャー客とに分かれてくる。利用の性格上からは、商用・業務と観光・レジャーに分類できる。

近年ますますお客様の居住地と利用目的による市場の細分化が進行していることから、以前にもまして時間マーケティングの発想が必要であり、朝・昼・夜のニーズに対応したきめ細やかな運営が必要である。以前の伝統的なフランス料理だけでは限界があり、より地域生活者の欲求にあった新しい店舗やメニュー、サービスの仕方を開発する必要がある。

売上げを伸ばすには、市場浸透、市場開発、商品開発を行うなどして利用率を高めなければならない。消費単価を上げるため、時間メニューとして、朝・昼・晩のメニューは違うものを提供するなど、きめ細かい対応が必要となる。

利用率を高めるためには、宿泊客では限界があり、地域生活者、特に周辺のファミリーの取り込みが必要となる。

繰り返しお客様に利用してもらうためには、その商品のおいしさに常に磨きをかけ、お客様の欲求に応えられるようにアップ・グレードをしていくことが必要となる。

ホテルも街のレストラン同様に、地域社会のライフスタイルとか消費性向といったものを、取り上げざるを得なくなっている。海外旅行もこれだけ一般化する中、当然各国のエスニック料理にも注意する必要がある。

食生活の多様化と多価値化時代を迎え、近い将来日本人も、アメリカ人と同じように自分の好みで選ぶ傾向が強くなり、より個人志向が強くなる傾向を考えると、ホテル内レストランも街のレストラン同様に、どういうお客様に合わせた店舗、商品、サービスをつくるかがますます問われてくる。

郊外のレストランなどに勝るコンセプトをつくりあげ、激しくなる競争に勝ち残っていかなければならない。

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