10年後を見据えた飲食店の課題 中国・エスニック=品数での勝負は魅力薄

1997.12.15 142号 21面

今はまさにイタリアンが大盛況で新宿高島屋や京都の新駅ビルなどはイタリアン料理が全盛だ。米国でも大盛況。その理由はイタリア人のお母さんというのは理想的な料理の名人であり、米国人にとり最高のお袋の味だ。子供のころから食べ親しんだ味だから、年をとってから懐かしくなり大繁盛しているというわけ。

日本でイタリアンがはやっているのは、フランス料理ほど高級で高くはなく、パスタやピザのように食べやすく、イタリアンファッションのように格好が良いという理由から。しかしパスタやピザ以外はやはり脂っこいしなじめないという声も聞こえてきた。格好が良く食べやすい料理の出現が必要のようだ。

過去、格好の良いエスニックということでタイやベトナム料理がはやったが、あまりに高価な根付けと極端な味付けでブームは去ってしまった。が、身近な東南アジア旅行などで本格的な味になじんだ消費者は、もう一度その味を食べたいと思うようになっている。しかし、今までのような高価な値段ではなく食べやすい味と雰囲気、価格を備えた料理が流行している。

洋食でも述べたが、米国から上陸したロイズという店はハワイで大人気の店で、料理の種類は環太平洋料理といわれている。野菜と魚をふんだんに使ったカリフォルニアイタリアンに、和食、ベトナム、タイ、中華、韓国の味をミックスしたもの。各地の味を食べやすいようにアレンジして出すので大人気になった。

米国のシカゴでも、アメリカ版ミシュランのZAGATで高い評価をもらっているArun’sというタイレストランがある。従来のタイ料理というと本格的な店は料理が本格的すぎて味が強烈で敬遠されていたが、ここでは料理の盛りつけに気を遣い、芸術的な盛りつけで大人気だ。

味はタイ料理とは思えないマイルドな味で誰でも親しみやすく、店内が美術館のように清潔。その他、ダスキンなどと提携しているシカゴのレストラン王のリチャード・メルマン氏の新コンセプトのBenPaoも、中華料理を中心にタイ、ベトナム料理を組み合わせて大人気。ニューヨークでも、東南アジア料理が人気で、Ajaという店がファッションモデルなどの間で評判。

日本でも中華料理の新しい挑戦をしているのは熊谷キハチさんのキハチチャイナや、石鍋さんのトーランドットなどが注目されているが、よりカジュアルな雰囲気をつくり出しているのが、際コーポレーションの中華レストランチェーンだ。同社の店舗は三八店舗ほどもあるが、特色のある中華料理はそれぞれ店名とコンセプトを変えて出店している。香港飲茶のテーマ大鴻運天天酒楼、北京料理の陸春坊日月飯荘を大成功させた後、昨年出店した北京ダックを中心とした胡同四合坊は、店舗の雰囲気といい、メニューの構成、特にデザートの充実は中華料理としてはすばらしいものがある。やはり中華といっても店それぞれの特徴を強く訴求する必要があるということだろう。従来のように北京、広東、四川、何でもあれの中華では魅力がなくなったというわけだ。

日本でもイタリアンから食べやすい中華料理、韓国料理や東南アジア料理物をカジュアルな雰囲気で提供すれば大成功するだろう。これらのエスニックは従来のように高級な本格的なものではなく、より食べやすい味付けで、カラフルな美しい盛りつけ、バリューのある見事なデザートによる女性客の獲得だろう。

バブルの時代から料理の鉄人の番組を経て、今の消費者はものすごく料理の知識を持っている。これからは消費者の知識に負けないように素材の工夫、盛りつけ、味付けであっと驚かせる工夫が必要だ。また、料理だけではなく、デザートの充実も女性客を獲得するという意味では、どのジャンルでも大切なキーポイントになる。

女性を大事にするためにはさらに店内に生花を飾るなどの和らいだ内装、スマイルのあふれるカジュアルな接客サービスが必要不可欠だろう。そして料理やサービスだけでなく、他と差別化のできる明確な特徴や強みが必要になるだろう。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら

関連ワード: 高島屋