飲食トレンド:オリーブオイルは調味料、和食の世界に静かに浸透

1998.03.02 147号 1面

年々高まる健康志向を背景にオリーブオイルの消費が急速に伸びているが、その影響が和食の世界にも及んでいる。オリーブオイルの認識を“油”から“調味料”に改める傾向が強まり、メニューのバリエーションが大幅に広がっているのだ。そんなおり、オリーブオイルを前面に打ち出すユニークな和食店も現れている。

東京は銀座、老舗専門店が立ち並ぶ一角に、オリーブオイル料理を屋号に掲げるユニークな和食割烹がある。「銀座浮船」(東京都中央区、電話03・3573・0085)がその店。小豆島産オリーブオイルを使ったオリーブオイル鍋とオリーブオイル天ぷらが看板料理で、日本人好みのライトな味わいが評判を得ている。

「オリーブオイル鍋」は、エキストラバージンオリーブオイルと和風だしを二対八の割合で合わせたスープを鍋に張り、牛肉とセロリなどの洋野菜、季節野菜をしゃぶしゃぶの要領で食すもの。湯がくと同時に味付けされた素材とスープをすくい一緒に味わう。スペインのオリーブオイルスープをヒントにしたこの料理。「スープの沸点が高いので、お湯で湯がくより肉の脂がよく溶けておいしい。ラム肉などほかの肉にもよく合います」(山田堅二料理長)とのこと。

「オリーブオイル天ぷら」はエキストラバージンオリーブオイルとサラダオイルを七対三で合わせ、一般的な天ぷらの要領で揚げたもの。軽い食感で食後にもたれないため年配者から大好評を得ている。「一度食べた年配者は高確立でリピーターになりますね」とは大槻勝昭店長。

銀座浮船がオープンしたのは一三年前。京朱盃料理の和食割烹として営業していたが、オーナーの意向でオリーブオイルスープをアイテム化したところ、これが大当たり。五年前のリニューアル時にオリーブオイル専門の和食割烹に特化した。

小豆島のオリーブオイル、それもエキストラバージンにこだわる理由は、「精製度が高く繊細な仕上がりなので、素材の持ち味を生かす和食に最適」とのこと。

オリーブオイルと和食の相性について山田堅二料理長は次のように指摘する。

「以前は油というイメージが強くドレッシングの材料ぐらいにしか考えていなかったのですが、使うほどに調味料としての魅力が強まっています。香りはもちろん、醤油などほかの調味料との相性も抜群。ライト感覚を演出するのに欠かせぬ存在になりましたね」

和食でオリーブオイルを活用する傾向は年々高まっている。銀座浮船はその一例にすぎない。こうした和食界のオリーブオイル旋風は今後もさらに広がりそうだ。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら

関連ワード: メニュートレンド