1級料飲サービス士探訪 中野サンプラザマネジャー・松橋豊さん
私は喫茶、宴会、結婚式の披露宴など、いろいろな分野を転職せずに経験できる、いわゆる総合的なサービスがあるサンプラザを希望して入社しました。入社二年目に調理師免許に挑戦、取得しました。
ここに勤務して一六年になります。私と同期に入社した同僚で、良い意味でのライバルでもあった某君が、平成6年に料飲サービス士の二級を取得しました。これは大変な刺激でした。私は彼に敗けまいと、二級を飛ばし一級の認定受検資格ができる年数(経験一二年)を待って、平成9年に一級に挑戦しました。
事前講習を受けて本格的に勉強を始めました。思ったより幅が広い試験の範囲です。私は意志が弱いので仕事が終わった夜は勉強に身を打ち込むことができません。そこで、朝5時からの一、二時間を勉強に当てました。必ず合格すると心に決めて、勉強をしました。学科、実技それぞれに苦労しました。
合格してから三ヵ月、金のバッジが早く来ないかとそればかり待っていました。バッジが届き、上司に報告しました。これこそ私が一番あこがれていて、欲しかったバッジです。これを胸に着ければカッコイイと思っていました。
しかし、えりに着けて見て思いました。何でこんな奴が金色に光るバッジを着けているんだ、あのバッジはなんだ、このバッジを知る知らないにかかわらず、そう思う方がいるのではないか。バッジを不審に思われてはならない。気持ちが変わりました。今まで以上に接客に神経を使うようになりました。
今私が勤務する喫茶室はサンプラザの顔といってはなんですが、お客さまが最初に入られるところです。休・祭日は婚礼の方が多く、かなりの方が、お式の前、宴会の前に、ここへ集まられます。お客さまは私どもに最初に接することになります。
私どものサービスが良ければ、次の宴会場に行けば、さらに良いサービスがあるのではないかと期待感をお持ちになる。サービスはここから始まるのです。お客さまに最初に不愉快な思いをさせてはなりません。私どもはお客さまが一日気持ち良くお過ごしになるよう心掛けています。
ウイークデーは商談の方がほとんどです。お客さまのお仕事の邪魔にならぬように気配りします。サンプラザの特徴として、大ホールで数々のコンサートが開催されます。入場前のお客さまで喫茶室は戦場のようになります。しかし、どんなに忙しくても従業員が殺気だっては、お客さまの楽しみの観賞をぶち壊してしまいます。従業員は効率良く仕事とサービスができなければなりません。
婚礼の場合、予約課で打合わせをし、さらに当日現場で細かい打合わせを致します。
お客さまは、こうしたい、ああしたい、と口で言われる方、希望があっても言わない方、さまざまです。言葉にはでないけれど求めているのはこれではないか、おっしゃりたいのは、こういうものではないか、口にされたのは二つ、三つだが、実際のお求めは五つ六つではないか。私のほうから九つ、一〇とできることを申し上げて差し上げる。
打合わせの時に読み取ることができなかった失敗経験の積み重ねから、学び得たものです。
私は私どもの仕事は生放送だよ、毎日が本番の舞台だよ、厳しい目を持ったお客さまが満足されるか、失望して帰られるか、多様なお客さまが多様な期待を持って来られる。私どもは毎日、自分の役によって、お客さまがご満足いただけるように努めなければならない、そう自分を戒めています。
◆プロフィル
まつはし・ゆたか=昭和57年(財)勤労者福祉振興財団・中野サンプラザに入社。喫茶室、レストラン、宴会を経験。59年調理師免状取得。平成9年料飲サービス士(西洋料理接遇部門)一級取得。現在、事業部営業二課(喫茶担当)マネジャー。
(聞き手・野崎正)
【参考】資格認定機関=社団法人日本ホテル・レストランサービス技能協会(東京都中央区銀座八‐一二‐六、小野商ビル2F、Tel03・3545・5481)