特集・デリバリーピザ市場:「ピアーザ」のコストダウン戦略

1998.09.07 160号 11面

店舗過密化による競合激化で、売上げダウンに歯止めがかからぬ店舗が増えている。月商二〇〇~三〇〇万円で暗い顔をしているオーナーも多いと思うが、ならば二〇〇~三〇〇万円でも利益の出る構造改革に取り組むべきではなかろうか。しょせん“バイク一台月商一〇〇万円”のブーム時はボロ儲けに過ぎなかったのだ。

いままでの宅配ピザ店は簡単すぎた。単純なオペレーション、店舗は厨房のみ、そして破格な低初期投資。店舗パッケージとノウハウさえ知れば、ブームを追い風にだれでも儲かる仕組みだったために、一つ一つのパーツに対する疑問(本当に必要なのか否か)や合理化意識をあいまいにしたまま現在に至っている。

そんななか、徹底したスリム化による利益重視型経営が台頭の兆しを見せている。成功事例を取材した。

広島県福山市を拠点とする後発チェーン「ピアーザ」は、従来にないユニークな店舗パッケージと利益重視戦略で、売上げ二〇〇~三〇〇万円ながら大手チェーンに匹敵するオーナー利益を捻出している。生業宅配ピザ店の進むべき未来像として話題になっている。

「宅配ピザが低投資業態とはいえ出店者は資産家層に限られていた。出店意欲旺盛な若者に起業チャンスを与えるために、コンパクトな店舗パッケージとモデル収支を設定しました」(大藤慎一代表取締役)

店舗パッケージとモデル収支のポイントは、初期投資とモデル月商、損益分岐点の大幅な引き下げ。

店舗内や車両などの装備は驚くほど簡素だ。店舗坪はわずか一〇坪弱。ストッカーは家庭用冷蔵庫。作業台は事務テーブル。オーブンは小型デッキ式が二台。車両はヤマハ「ギア」が三台。開店までの初期投資は物件費込みでわずか二五〇万円前後。オープン後はスタッフ三~五人で運営している。

「オーナー店長の店舗在中を原則とし、食材は営業前に当日使用分だけを仕込みます。手作業に頼る部分が多いのでオーナー店長は大変ですが、その分さまざまなパーツと経費が省略できます」

モデル月商は二〇〇~三〇〇万円と従来型の半分程度。だが、手作りによる食材原価の圧縮、ヤマハのギア導入によるランニングコストとメンテナンスコストの大幅削減、また、メニュー固定化による販促費の削減(キャンペーンなし)などで損益分岐点を大幅に引き下げ、オーナー利益率はなんと従来型宅配ピザ店の二倍にまで高めている。

オーナー利益率は三〇~三五%、金額でいうと六〇~一〇〇万円強。これは月商四〇〇~六〇〇万円の従来型と同じ数字である。しかも圧倒的な低初期投資で、減価償却期間もわずか約半年という設定だから、実際は従来型よりもはるかに儲かる。

「売上げが低くてもオーナー自身が頑張れば、利益は十分に出ます。ノウハウやオペレーション主導で始める従来のデジタル経営を、現実的なアナログ経営にリニューアルしたのがピアーザの店舗パッケージ。必要なものは売上げに応じて積み上げて行く方式です。宅配ピザ店の利益捻出はオーナーの意欲次第です。“ローリスク・ハイリターン経営”は宅配ピザならではのだいご味だと思います」

「また、オーナーは手作業に労力を払いますが、逆手にとれば手作りピザとしてプレミアムを訴求できます。これも差別化の原動力ですね」

現在の店舗数は福山市を拠点に一四店舗。今年に入り、さらなる食材原価の圧縮とプレミアム訴求を図るため、二ヘクタールの土地を購入し、トッピングに使う野菜類の無農薬栽培を始めた。無農薬栽培野菜のトッピングは一割増しの価格設定だが、オーダーの八割を占める好評ぶりだ。栽培の手間こそかかるが、食材原価でいえば一店舗あたり月一〇万円ほどのコストダウンになるという。

同店が市内でドミナント展開を始めてから、他チェーン店が撤退を余儀なくされている現状を見れば、大手チェーン寡占傾向という昨今の業態認識は覆されるはずだ。

◆社名=(有)クワトロポルテ/ストアブランド=ピアーザ/代表者名=大藤慎一/創業設立=平成元年/所在地=広島県福山市御幸町上岩城五〇四‐一、Tel0849・55・2066/店舗数=一四店舗(直営三・FC一一)/商圏設定=一~三キロメートル・八〇〇〇世帯/月商=二〇〇~三〇〇万円/客単価=一六〇〇円/店舗パッケージとモデル収支は文中

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