新店ウォッチング 「スムーズィ・クラブ」米国流“飲むかき氷”
この欄ではこれまで、既存チェーンの新業態を中心に取り上げてきたが、今回はまったく新しい商品を導入した新規参入企業の店舗をご紹介したい。
この新しい商品というのは、いま米国の、特に西海岸でちょっとしたブームになっている「スムージー」である。
味はこってり冷たさも別格
このスムージーとは、果実のジュースやチョコレート、コーヒー、ヨーグルトなどと、果肉や氷、シャーベット、アイスクリームなどをブレンダーで混ぜ合わせた、飲み物と食べ物の中間的な食品であり、食感はFFSの商品として広く取り扱われているシェイクやアイシーなどに近い。ストローで飲めるシャーベットか、かき氷といった感じだ。
ただし、スムージーには多様な素材がミックスされているために、非常に濃厚な味覚を感じさせ、また極度に冷たいのが特徴である。さらに、「ブースト」などと呼ばれる、ビタミンやミネラル、その他の栄養素のパッケージを添加することで、ヘルシー・フードとしても人気を得ている。
今回訪れた「スムーズィー・クラブ」は、今や地方出身の若者たちのメッカと化した渋谷のセンター街を擁する宇田川町にあるが、人通りの激しい通りからは少し外れた住居地域の入口付近、昔ながらのスナックや飲み屋が建ち並ぶ一角に位置している。
価格抑えれば商圏なお拡大
店前をパラパラと通る人々は、そのほとんどが目的地を持って足早に歩いている社会人であり、渋谷らしい若者は数えるほどしか見当たらない。
一五坪ほどの店内はコンパクトにレイアウトされているが、イートインにはやはり少々狭い。この商材は、路面店よりもショッピングセンターのフードコートに向いている。すでに今後の出店も決定しているようだが、ぜひSCへの展開を計画すべきだろう。
スムージーの品ぞろえは、ラズベリーやリンゴを使った「チャンク・ベリー」やブルーベリーとバニラアイスなどが入った「パープル・ハワイ」、ブドウを使った「ザ・グレープフル・デッド」など一三種類で各四七〇円。米国流のダジャレ風ネーミングが楽しい。
パワー・ブースターはプラス一一〇円であり、ほかにもグルメコーヒーなどをラインアップしている。
大人がコーラの特大サイズをがぶ飲みするような米国と違って、カップのサイズを小さくしたのは正解だが、スムージーの価格帯が若干高すぎはしないだろうか。そのことが商圏を広げて、展開を阻む要因になることが懸念される。
取材者の視点
スムージーという言葉は「なめらか」という意味の「スムーズ」から発生した俗語で、もともとは「しゃべりの巧みな人」とか「紙質の良い雑誌」などのように、「なめらかさ」を感じさせるものを指す俗称の口語体であった。
それが転じて、現在はやっている「なめらかなのどごし」を持つ「飲むかき氷」のような食品の総称として使われるようになったのである。
米国では、以前から「ジュースバー」という業態が幅広く認知され、ジュースバー専門のコンサルタント会社があるほどだが(わが国の地ビールブームを思い浮かべていただければ分かりやすい)、その流れを受けて出現したのが、このスムージーだ。
現在は、西海岸を中心に「ジャンバ・ジュース」というスムージーの専門店チェーンが、ショッピングセンターや主要な繁華街の路面店などで展開を進めており、いわゆるヘルシー指向と相まって人気を博している。
筆者は今夏にロサンゼルスの「ジャンバ・ジュース」を訪れたが、ポップなデザインとユニークな商品ネーミングで、ロデオドライブなどでもひときわ目を引いていた。
「スムーズィー・クラブ」は、外食プロパーではない企業の、いわば異業種参入であるが、どこへ行ってもホスピタリティーの欠如したアルバイトばかりが目につく渋谷で、幾分ぎこちないながらもまじめに仕事に取り組む従業員には好感が持てた。
渋谷の繁華街の裏通りで、手をつないで散策するカップルを横目に見ながら働く従業員たちのためにも、経営トップは、ぜひ真剣に外食のノウハウと戦略を学び、この店舗をチェーンとしての成功へと導いて欲しいと思う。
◆「スムーズィー・クラブ」=センチュラ・クリエーションズ、東京都渋谷区宇田川町三七‐一、Tel03・3469・2861/開業=一九九八年/店舗面積=約五〇平方メートル/営業時間=平日午前9時~午後10時、日曜午前11時~午後9時
◆筆者紹介◆商業環境研究所・入江直之=店舗プロデューサーとして数多くの企画、運営を手がけた後、SCの企画業務などを経て、商業環境研究所を設立し独立。「情報化ではなく、情報活用を」をテーマに、飲食店のみならず流通サービス業全般の活性化・情報化支援などを幅広く手がける。