うまいぞ!地の野菜(10)宮城県現地ルポおもしろ野菜発見「曲がりネギ」

1998.11.02 165号 13面

「うちらは小さい時から曲がったネギを食べていたから何の不思議もないんだけど、東京に出荷したら曲がっているせいかなかなか売れず、ついに戻ってきましたよ」と笑う鈴木孝雄さん(67)。北目地区の曲がりネギ栽培農家四五戸の一人である。

「ここらでは太白ネギと呼んでいるけど、白くて柔らかいし、独特の甘みがあって、味噌汁から納豆、鍋にと毎日食べない日はないね」と言葉を添えるのは奥さんのひよしさん。ご主人を「たかおちゃん、たかおちゃん」と連発する陽気な奥さんだ。

曲がりネギは、明治末期に仙台市余目(あまりめ)部落の永野さんが栽培を始め、余目ネギとして親しまれてきたが、最近では「仙台曲がりネギ」の名称で仙台周辺に出回っている。

寝かせて栽培

曲がりネギは直立棒ネギと違い、定植と同時に覆土して曲がりをつけ、軟白部の組織を長く柔らかいネギに仕上げる。この栽培法は仙台だけの独特のものである。

夏から秋にかけ収穫される曲がりネギは、10月に播種し、一〇日前後で発芽。寒くなると透明ビニールをかぶせ、翌年の3月に移植し、6月ごろまで成長させる。

ここまでは一般の直立棒ネギと同じ栽培法だが、曲がりをつけるために傾斜をつけた斜めの畝にネギを寝かせて移植、根のところに軽く土をかぶせる地元でいう「やとい」を行い、一ヵ月も置くと軟白部分が成長し、寝ていた緑の葉の部分は垂直に伸び上がってくる。

こうなれば収穫の始まりだ。7月中旬から11月いっぱいが収穫期。耐寒性が劣るため、12月になると葉が落ちて白い根も堅くなる。

甘く柔らかく

宅地造成が進む住宅地に中州のように青々としたネギ畑がある。奥さんと嫁の薫さんの三人で作る曲がりネギ畑は五反。「昔は一反だったが、増反したんです。だんだん味が知られ、需要が増えてきたので付近の農家でも田圃をネギ畑に変えていますよ」

かつてはキュウリ、ゴボウなどを栽培していたが、収穫期には集中しての出荷だった。曲がりネギに替えてからは出荷量も調整でき、掘り起こしも覆土が浅いため力も要らず、高齢者にはピッタリの作物なのかもしれない。

「秋の芋煮会の季節になるとドーンと出荷が増え、予約が入る」というほど地元では人気の曲がりネギ。曲がったネギと偏見をもたず、甘くて柔らかな味わいを知る人が増えることを願う。

■生産者名=鈴木孝雄、宮城県仙台市太白区郡山字北目宅地五〇、Tel022・247・0041

■販売方法=仙台中央卸売市場

■価格=一キログラム約三〇〇~四〇〇円

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