飲食トレンド:柔らかくさっぱり「ハーブ豚」
豚肉はビタミンBなど栄養豊富なおいしい肉として人気は高い。ただ独特の脂臭さとヘルシー志向に背を向けた脂肪の多さが気になるという声も聞かれる。こうした要望に応えたのが「ハーブ豚」。種豚にこだわり、肉質形成期には四種のハーブ入り植物性飼料が与えられた健康豚。柔らかく、うま味のある肉は、従来の豚肉特有の臭みもない。脂肪を気にする人、においの気になる人、さっぱりと食べたい人など、「ハーブ豚」の登場によって、豚肉メニューの新たなファンを呼べそうだ。
「お客から豚肉は脂身が多い、カロリーも高そう、それに臭みがどうもという声を聞いていたが、ハーブ豚を使うことで豚肉メニューのオーダーが確実に増えてきました」と語る「天外天」中川優総料理長。
一年前、先輩シェフの紹介で知った「ハーブ豚」を半信半疑で試食したところ、「臭みがなく、思ったより柔らかい。それになんといっても日持ちが良い。一般豚の一・五倍」と大満足。
さっそく月替わりで新鮮さを売り物にした「料理長のおすすめ」メニューに組み込んでみる。
お客の六割が女性客。土日は家族客で賑わう同店。それだけに「健康への気遣い、食べやすさへのニーズは高く、お客の反応は上々」とみた。当初はグランドメニューに、現在ではランチメニューにも入れ、一日二~三キログラムを使う。
「肉質そのものを味わうのに適している」特徴を生かし、部位による使い分けをする。一頭で一キログラムと少量しかとれないもも肉の内側は、従来から人気あるメニュー「雲白肉片(豚肉の薄切り香辛ソース)」に。また、ハーブ豚のための新メニュー「季節野菜と豚肉炒め」などいくつかを出し、好評を得ている。
一般豚との価格差は一割高。「あくまでもお客のニーズに応えていきたいので」問題はないが、「もう少しクセがあり、肉質もしっかりしているほうが良いのでは」というのが個人的要望。
今までにない品質の「ハーブ豚」。レストランから一般消費者へと販売網が広がれば、新しい味覚変革がおこるのかもしれない。
●ハーブ豚とは?
雄はデュロック種、雌はランドレーヌ・大ヨークシャー種の専用種豚を掛け合わせて誕生した豚。豚肉のもつ脂臭さをなくそうと、肉質を形成する六〇~一二〇キログラムの約二ヵ月間に植物仕立ての飼料にハーブミックスを加え、飼育されている。ハーブはオレガノ、ジンジャー、シナモン、ナツメグの四種。
一般の豚に比べ畜肉性高く、脂肪分が少ない。また、アミノ酸のうまみ成分を多く含んだ柔らかい肉質をもち、特有の臭みもなく、あっさり味。ドリップも出にくく日持ちがするなどの特徴がある。