シリーズ・繁盛店の厨房(6) 作業区分と空間区分
先に、厨房を取り巻く周辺、つまり厨房圏の重要性について述べた。今回は厨房の作業区分はどうなっているか検討してみよう。
厨房の作業区分を知るには、厨房をひとつの生産工場として見ると理解が早い。
それは、食材を入荷して、それぞれの調理加工によって料理に仕上げるプロセスは、多品種少量生産の町工場組織と変わらないからである。小工場は、得意先の注文によって、一人で何役も、何工程もの作業を担当し、得意先の要望の日時に応じなければ成り立たない。
生産の場は、狭まければ狭いなりに、日常それぞれの作業を能率よく対応するための工夫をしている。
厨房は、調理加工を施して、客に料理を提供する場の条件として、その周辺に必要施設が有機的に連携していなければならないと先にも述べたとおりである。
そこで、ここで厨房内区画を大別してみると、食材の搬入口と検品ホール、下処理した食材の保管場、それに下調理と主調理場となる。主調理場はさらに冷菜と温菜調理場に区分される。
また、下調理以上は、いわゆる主調理場となり、盛付けから配膳に至るエリアは清浄区域として、それぞれ区画ないし明確に境界区分することが理想であろう。
もう少し具体的に言うならば、食材保管と下処理コーナー以下は準清浄エリアであり、下調理と主調理以上は清浄コーナーとなり、厨房内を大きく二区分する。さらに同じ清浄区分の中でも、生物と加熱物のコーナーは別々に、また盛付け場に隣接する食器洗浄場も別区画としたい(図参照)
ところで、厨房の天井が高く、自然光のように手元暗がりの生じない、快適な環境を何人も望むところである。それでは、厨房の天井高は如何あるべきか検討してみよう。
まず厨房内で、高さのダメージを受けやすいのはフードの高さである。近年平均身長が伸びたこともあり、フードの下端は一九〇㎝というのが妥当で、帽子をかぶった身長を考慮すれば二〇〇㎝にもなる。このフードの妥当性から厨房の空間寸法を試算すると次のようになる。
フードの下端を一九〇㎝として、フード本体の高さは約六〇㎝、従って、厨房の見えがかりの高さは二五〇㎝以上となる。
ここまでが厨房空間部分で、実際に見える部分である。天井裏にはダクトが通過するので、その厚みを三五㎝として、これにメンテナンスのため六〇㎝の空間を要し、これらを加えた総高さが三五〇㎝以上となり、これが建築構造の基本寸法となる。
この試算は天井梁部分を考慮しない実寸法であることを留意したい。
厨房コンサルタント
島田 稔