で・き・る現場監督:海鮮くいもの家・海のさむらい白石健治店長
坂東太郎グループの一つとして、平成7年12月にオープンした「海鮮くいもの家・海のさむらい」は、新鮮な海の幸をメーンにした居酒屋に近いファミリーレストラン。年商一億三〇〇〇万円、平均月商一五〇〇万円のこの店を切り盛りする白石店長は、二八歳の元銀行員。異業種から飛び込んだ白石店長の悩みは、「スタッフとのコミュニケーション」だったという。
「どういう形で、スタッフに仕事を面白く感じてもらえばいいのか、答えが見つからなかったんです」
と、白石店長。しかし、転機は、昨年参加した海外研修で訪れた。多くの店舗を回り、海外から日本を見ることで、店長としての自分の役割に気づいたという。
井の中の蛙(かわず)になってしまわぬよう、スタッフには、東京まで行き、いろいろな店を見てくることをすすめている。
「どんなカクテルがはやっているのか、店内の演出はどうかなど、外の動きを知ることで、店の状態を、客観的に把握することができるんです」
外の世界を見て刺激を受けたスタッフからの提案を取り上げ、炉端の飾り方や、おすすめ商品の書き方などを実行してきた。
「外を見るということを実践するようになってから共通の話題が増えて、コミュニケーションを取れるようになったんですよ」
スタッフとの接し方で、常に心がけていることは、絶対に弱みを見せないこと、と白石店長。
「常に元気でいる状態を見せれば、スタッフも安心すると思うんですよ」
しかし、店長一人がいくら張り切っても、空回りしてしまっては、店の活気にはつながらない。
「そのためには、スタッフとの共通認識を持つことが、大切だと思います」
一つのテーマを、朝礼の場などで常に言い続け、スタッフ全員に浸透させる。共通認識を持つことで、店の雰囲気も一つにまとまり、客にとってもわかりやすい店となる。
また、白石店長はスタッフに、常に自分がどうなりたいのかを言わせ続けている。こうありたい、という姿を自覚させることにより、仕事の上での目標が自然と決まってくる。目標が明確になればなるほど、がんばろうという姿勢ができてくるのだ。
白石店長の、「楽しく仕事のできる環境づくり」が功を奏してか、人間関係のトラブルで店を辞めていくスタッフは、ほとんどいないらしい。
「学校の卒業などで、アルバイトを辞めていく子たちに、ここで働いてよかったと言われるのが私の喜びでもあるんですよ」
調理にそれほど詳しくない自分が、店をやっていけるのも、一緒にこの店を立ち上げた板長のおかげ、と白石店長。
「店長として、私をたててくれるほかの社員にも、とても感謝しています。心からのもてなしができるように、これからもスタッフと共通の目標を持ってがんばりたいですね」
◆しらいし・けんじ=昭和46年茨城県生まれ。銀行員時代、得意先であった「ばんどう太郎」の社長と接し、外食業界の奥深さに魅了されて七年前に転職。以来、系列店の八幡太郎で勤務し、海のさむらいのオープンと同時に店長となる。
夫婦共働きのため、週に一度の休みは、一人で過ごすことも多い。二人で一緒にとれる貴重な休日には、買い物や食事に出かけたりするという。