この1品が客を呼ぶ(1)味噌煮込みうどん
どこもまねできぬ圧倒的強さを誇る看板メニュー。日々、オリジナル力と集客を競う飲食店業界にあって、そのメニュー開発は永遠のテーマである。ひとつのメニュー開発が大繁盛の原動力となった成功事例を新規連載する。一回目は、北関東で圧倒的強さを誇る和風FR「ばんどう太郎」の名物「味噌煮込みうどん」。
味噌煮込みうどんといえば、尾張名古屋の名物として広く知られている。名古屋には味噌煮込みうどんを始めとして、きしめんなど美味なるものが多い。八丁味噌をふんだんに使った名古屋の味噌煮込みうどんは、そのコクのある汁がおいしさのポイント。
一方で、関東平野に和風FR「ばんどう太郎」、こだわりのとんかつ屋「かつ太郎」などを展開する(株)坂東太郎が作り上げた「味噌煮込みうどん」は、尾張名古屋のコクのある味噌煮込みうどんとは一線を画し、まろやかな味わいが特徴といえる絶品だ。
名古屋の味噌煮込みうどんを「西の横綱」にたとえるならば、ばんどう太郎の味噌煮込みうどんは「東の横綱」の貫禄十分といったところであろうか。今や、ばんどう太郎といえば春夏秋冬、四季を問わず味噌煮込みうどんが売れ筋トップ料理となっており、名実ともに同店の看板料理となっている。グループ会社「元気うどん」でも、もちろん、売れ筋トップの座にある。
その誕生は、坂東太郎の青谷洋治社長が出張先の名古屋で食べた味噌煮込みうどんのおいしさを忘れられず、関東風にアレンジしてばんどう太郎の看板料理としたいとの、強い思いに裏打ちされている。さすが、青谷社長自ら音頭をとって試行錯誤の結果誕生した一品だけあって、本場の味を残しつつ、関東風に見事にアレンジされた逸品中の逸品に仕上がっている。
ばんどう太郎の味噌煮込みうどん、そのおいしさの秘訣は八丁味噌と白味噌との絶妙なブレンド方法にある。これはもちろん、社外秘。関東風にアレンジされたその汁はほんのりと甘く、塩辛さをほとんど感じさせない。それもそのはず、岩塩を天然水に溶かし込み抽出した特製の天然塩を使っているからこそ出せるまろやかさなのだ。
この天然塩は、うどんを練りこむ時にも使われている。丹念に練り上げられたこしのあるうどん、まろやかな味わいの汁が絶妙にマッチした味噌煮込みうどんは、こうして出来上がった。
関東平野では、本場尾張名古屋の味噌煮込みうどんが「張出横綱」に思えるほど、ばんどう太郎の味噌煮込みうどんの人気の高さは圧倒的といえる。
記者席からコメント
素材にこだわりを持つ店は全国多々あるものの、チェーンオペレーションを行い、かつ、素材へのしつこいくらいまでのこだわりをばんどう太郎は持ち続けている。
特に、あの味噌煮込みうどん。これは、確かにこだわりの一品に違いない。もともと、味噌煮込みうどんの好きな筆者。自宅で作るときは通常のうどんを入れるとどろどろに溶けてしまうので、山梨県の特産品である「ほうとう」を使っている。
しかし、問題は汁にある。八丁味噌を扱っている店が近くに少ないこともあり、白味噌を使わざるをえないのだが、白味噌でつくると非常に水っぽいものになってしまう。かといって、八丁味噌が手に入ったとしても、八丁味噌だけでは、塩辛くて今一つ。合わせ味噌の汁を作ることができないだけに、ばんどう太郎の味噌煮込みうどんのマイルドかつコクのある汁は、ピカ一の出来だと思った。
この味噌煮込みうどんならば、毎日食べても食べ飽きることはないだろう。筆者一押しの一品と断言してはばからない。ばんどう太郎には、素材へのこだわりの姿勢を今後も貫いてほしいと思う。