で・き・る現場監督:よってこや恵比寿店・泉博幸店長

1999.11.01 191号 10面

京都の屋台ラーメンの味を売りにし、大阪周辺で約三〇店舗を構える「よってこや」が、恵比寿に東京第一号店をオープンしたのは今年の3月。関西で築いた確固たる地位と自信を秘め、ラーメン店がひしめき合うこの地に、あえて実験的にオープン。当初の目標をクリアすべく、順調に売上げを伸ばしている。

8月から二代目店長として腕を振るっているのが、泉博幸さんだ。開店からわずか五ヵ月で店長が交代したのは、店舗のさらなる活性化を図りたいという本部の思惑があったから。そして、そのためには泉さんの明るさとリーダーシップが必要だったのだ。

確かに、お客が入って来た時の泉さんの対応は、明るくさわやかで元気いっぱい、そして気持ちのいい笑顔を浮かべて、声高らかにあいさつをする。もちろんスタッフは皆、泉さんに倣う。

「お客さまにはラーメンだけではなく、この店の雰囲気も味わっていただきたいですから。スタッフは特に何も言わなくても、私の元気のいい姿を見て、自然と明るく振る舞ってくれます。みんな明るくて元気なコたちばかりです」

泉さんはスタッフとの対話を重視する。マニュアル以外の作業をしている人には、なぜそういうことをするのかを徹底的に聞き、マニュアルとの効率の差を、相手が納得するまで説明する。

とはいえ、マニュアル絶対主義ではない。スタッフの意見を積極的に取り入れるという柔軟性も持っている。例えば、客席に置いてある醤油やラー油などの調味料びん。スタッフの一人の「毎日洗ったほうがいいのでは」という意見を取り入れ、実行している。見ると、確かにぴかぴかに輝くびんが気持ちよく並んでいる。

「スタッフの話はきちんと聞くように心がけています。ときにはプライベートな相談をもちかけられたりもします。店長というより、兄貴に対するように接してくれるのがうれしいですね」

よってこやのラーメンは、口当たりがこってりしているのに後味がすっきり、という独特のスープに人気がある。これは、作る過程においてスープを何回も何回もかくはんして酸素を多く取り入れてコクを出すためだ。

しかし、いくら人気があるとはいえ、東京第一号店、しかもラーメン激選区の恵比寿で店長を任された泉さんに、プレッシャーはなかったのだろうか。

「よってこやの味をきちんと守って、徹底したサービスをすれば、絶対にお客さまが来るって信じていましたから。でも、もっとコクを出そうとスープのかくはんを多くしたり、少し気負った部分もあったのかもしれないですね」

東京第一号店の売上げが順調なため、年内、年明けと立て続けに二店舗、首都圏でのオープンが予定されるよってこやだが、泉さんはすでに、それぞれのオープニング店長として赴任することが決まっている。

「要するにムードメーカーですよ。チェーン店なので、味はどこも同じ。ならば、それぞれの環境にあった雰囲気づくりをサポートしたいと思っています」

雑誌などでも紹介されるようになり、お客が増え続けている今、いかに人気を確固たるものにするかが当面の課題だという。そのためには、一にも二にも感謝の気持ちを大切にすることだという。

「親切は時として大きなお世話になることがあるけど、感謝の気持ちだったら素直に受け入れられると思うんです」

泉さんのこうした姿勢がスタッフ一人ひとりに伝わり、ラーメン激戦区で成功を収めることができたのだろう。

◆(株)大阪王将/代表取締役=文野直樹/創業=昭和52年/本部所在地=大阪府枚方市春日北町一‐一〇‐一〇、Tel0720・59・0548

◆よってこや恵比寿店/東京都渋谷区恵比寿南二‐三‐一五、Tel03・5725・1030/店舗面積一五坪・二八席/客層二〇~三〇代、男性が六割/客単価=九八〇円

◆いずみ・ひろゆき=昭和42年愛媛県生まれ。神戸の大学を卒業後、七年間営業マンとしてサラリーマン生活を送るも、転職を決意。「初めてキッチンに入って作ったサンドイッチを、お客に出した時の感動が忘れられず」学生時代にアルバイト経験のある飲食業界へ再就職する。

平成7年に大阪王将入社、大阪で三店舗を経験し、今年8月に恵比寿店へ。趣味はサーフィンだが、休日はもっぱら食べ歩きや飲み歩きに費やすことが多いとか。

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