トップインタビュー:アウトバック・ステーキハウス住谷栄之資会長
米国最大手のステーキレストランチェーン「アウトバック・ステーキハウス」の日本一号店が、このほど(株)WDIシステムの招きにより東京都町田市のグランベリーモールにオープンした。同チェーンは、各店の店長が出資して経営に参加、業績に応じて利益分配を受け取る独自のシステムによって急成長したベンチャー企業だ。注目を集めている日本上陸後の展開について、WDIシステムの住谷栄之資社長に聞いてみた。
‐‐これからはカジュアルダイニングの時代といわれているが、日本での展望について。
住谷 いまは身近に簡単に空腹を満たすフードや業態がいくらでもある。その中でレストランの存在が、目的を持った人たちに利用されるものに変わってきた。
そこでは、仲間と食事をしたり会合を持ったりと、人と人とのコミュニケーションが大事になってくる。これからのレストランは、そうした目的を持った人たちに選ばれなくてはいけない。
アウトバック・ステーキハウスは、人とのかかわり合いを大切にし、お客さん同士が楽しめるようなエンターテインメントを提供したいと考えている。カジュアルダイニングという業態は、質の高い料理が楽しめ、価格もリーズナブルで、いろいろな目的に使っていただけるだろう。
‐‐チェーン化の構想は。
住谷 品川に都心型店舗として二号店が7月オープンする。五年で直営五〇店舗が目標だ。 ‐‐御社の特徴のひとつとして、システムマネージング・パートナー制度があるが、日本でも同様の制度を採り入れるのか。
住谷 この制度は、「店長は店に投資しているパートナー」という考え方に基づいている。報酬が大きな部分を占めるので、インセンティブ制ともいえるだろう。マネージング・パートナーの店長は、最初に二万五〇〇〇ドルを出資し、基本給のほかにキャッシュフローの一〇%が還元される仕組みだ。
日本でもこのシステムは採り入れる。これは非常に重要な要素で、従業員がやる気を持って働くことの何よりの原動力となる。
‐‐町田の一号店からか。
住谷 そうです。ただ米国に比べて、家賃や食材費などのコストが高いこともあり、半年ぐらいは売上げなどを見てから、分配率などの数字は決めていきたい。
‐‐米国では、店長はどのくらいの収入を得ているのか。
住谷 この制度の契約期間は五年。その前にマネージング・パートナーの資格を得る必要がある。五年で契約は終了し、その後継続したければ新しい店に行ってもいいし、実績が良ければそのまま続けてもいい。五年の間に資金をためて、本当の自分の店を持つこともできるだろう。店長の平均年収は一一万ドルだが、中には二〇万ドルくらい稼ぐ店長もいる。
‐‐日本での店長の年収はどれくらいになりそうか。
住谷 想定だが、一〇〇〇万から一二〇〇万円というところだろう。
WDIでは、すでに業績に応じた配分を社員に分配するインセンティブを実施している。アウトバックの場合、対象は店長のみ。他のスタッフは、自分たちもいつか店長になるという夢で働いている。
しかし日本の場合、店を丸ごと任せてマネジメントができる能力のある店長は、なかなかいないというのが現状だろう。人材を探すことが大変だと思う。
‐‐このマネージング・システムのリスクは。
住谷 業績が上がらなければ当然、店長本人にとっても会社にとっても利益が出ないことになる。しかし利益がなくても、特別なことがない限り、五年の契約期間中に解約はしない。
‐‐従業員のフレンドリーなサービスが、御社の売り物のひとつだが。
住谷 米国はパートタイ
マーなどの従業員には、お客からのチップという報酬がある。日本の場合、チップのあるなしはあまり問題ではないが、米国人のようなフレンドリーな接客をできるかが課題だろう。
ここは日本で、お客も従業員も日本人。そこに米国のカルチャーをいかに浸透させられるかだ。
制度だけがあって、実態が何もないということでは困る。施設などのハードではない、サービスというソフトの部分で、米国のアウトバックカルチャーをどれだけ表現できるかがカギだろう。
(聞き手・加藤さちこ)
ステーキハウスジャパン=全米で五七〇店舗、その他一六ヵ国で三〇店舗を展開するアウトバック・ステーキ社が、日本での展開にあたって「カプリチョーザ」「トニーローマ」「ハードロックカフェ」などを展開する(株)WDIシステムと業務提携し設立した合弁企業。
◆「アウトバック・ステーキハウス南町田グランベリーモール店」=東京都町田市鶴間三‐六 042・788・3360
(株)WDIシステム代表取締役社長、㈲アウトバック・ステーキハウスジャパン代表取締役会長
◆すみたに・えいのすけ=昭和18年奈良県出身。慶応義塾大学商学部卒業後、藤田観光(株)を経て、昭和44年(株)WDIホールディングを創業、取締役に就任。以後、専
務取締役、WDIハワイ(米国法人)代表取締役、現社・専務取締役を経て、平成10年現職就任。(社)国際観光日本レストラン協会理事、同常務理事を歴任。