チェコの食材と料理・内に秘めた歴史と文化、知られざる“食の宝庫”

2000.07.17 208号 21面

ヨーロッパ中部の内陸部に位置し、日本の北海道と同じくらいの面積を有するチェコ共和国の食材と料理にふれた。一九九〇年にチェコスロバキア社会主義共和国から自由主義のチェコ共和国としてスタートとして一〇年がたった。

世界でも有数の機械工業国であり、伝統的なガラス工業は、ボヘミアン・カットガラスであまりにも有名である。農業生産では小麦、ライ麦、エンバク、バレイショなどが挙げられる。「ピルスナービール」発祥の地でもある。

しかし、チェコの食品、食材・料理の分野は、日本ではなじみが薄い。チェコを含めたハンガリー、ブルガリアなどの東欧圏は、食材の宝庫と指摘する人もあるが、いまだ未知の世界でもある。

そのチェコの食材と料理メニューを研究テーマに、本社が主催する二一世紀外食レストラン研究会(事務局03・3432・5700)を、チェコ共和国大使館の全面的な協力のもと、大使公邸で開催した。以下はチェコ食材とメニュー研究会のレポートである。

ヨゼフ・ハヴラス特命全権大使が「チェコは大変に幸せな時期にあります。チェコの人間、歴史、経済、文化、習慣について、料理を通し皆さんの理解、関心をますます深めていただきたい」と歓迎のあいさつがあった。

会場には、大使館付きのペーハール・シェフが腕を振るったチェコの伝統料理、食材・製品などが並ぶ。チェコ製の陶器「ブルー・オニオン」と、チェコ・グラスの逸品「モーゼル」がディスプレーされた大使公邸ゲストルームで、太木光一研究会代表コーディネーターによるチェコの食材・料理の解説や、チェコの温泉で鉱泉水を飲む特徴的なカップを持参しての飲み方の説明があった。

大使館側からもヤン・パーネック商務・広報担当官、イージー・クリシュ商務参事官らが出席。パーネック担当官から日本で手に入る食材やチェコ料理の伝統について、以下のような調理解説が行われた。

●オードブル

冷たいオードブルには三つの特色がある。ソーセージをビネガー、ハーブ、スパイスで調整したマリネに数週間漬け込み、味を浸透させたチェコ独特のソーセージ漬け。酢が入っているので、アルコールに相性がよく、人気のメニュー。

スパイス、生のマジョラが入り、ゼリーとポークを丸めたポークロール。最近の健康志向から人気の出たダイエット・クラッカー。ミネラルを含みコレステロールは含まないウエハース状のものにチーズクリームのレッドペッパー、レバーパセリ、チキン・マヨネーズなどのトッピングの組合わせメニュー。また、温めたソーセージにはチェコのマスタードが良く似合う。

商務官いわく「チェコ人にとって、フランスのマスタードは刺激が強すぎる。イギリスものは酸っぱすぎるし、ドイツのものは甘すぎる。チェコ人はチェコのマスタードを持っている。やはり、比較するとバランス、味ともに素晴らしいものがある」と絶賛する。

●スープ

チェコのスープは、クリーミーな濃厚スープが多い。キャベツのスープはソーセージ、それにスパイス。ポテトスープはニンジン、セロリーなどの野菜類、それにマジョラムというチェコ独特のスパイスが使われている。

●ホット・ミール

春は「ホーク・ロイン、甘酸っぱいキャベツ添え」、夏は「ビーフ・テンダーロインをクリーム・ソースでクラム・ベリー添え」、秋は「グラーシュ、キノコ添え」、冬は「ポーク・ウインナースニッシェル、白身魚の片身ディープ・フライに」。

これらはすべてダンプリング、ポテト・サラダ、パンを添えてのメニュー。中でも秋のグラーシュは、チェコのキノコが入って、ハンガリーのグラーシュとはまた違った味を醸し出す。

チェコ人にとって、秋の週末に森に出かけての家族と一緒にキノコ狩りした後のグラーシュはおふくろの味とか。

●デザート

代表メニューは「カスタード・クリームとフルーツのクリスピー・バスケット」「スポンジ・ケーキのチョコレート・ロールにクリーム添え」「アップルパイ・ロール、ホイップ・クリーム添え」「フルーツ・タルト:ブルーベリーとピーチ」「バニラとナッツ詰めカルルス・バード・ウエハー」の五品。

デザートはコーヒー、紅茶のほかに、チェコではフルーツティーやハーブティーでいただくのがトレンディーとか。中でもフーデックスにも出品された伝統的なカモンミール・フルーツティーは、森の中で採れたティーで、コレストフルーツティーといわれて大変珍重されているようだ。

◆日本で手に入るチェコ産食材・製品の照会先=チェコ共和国大使館・商務部(東京都渋谷区、03・3400・8122)

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