米国外食産業の現状:文化にはぐくまれた食習慣

2000.11.20 216号 4面

◇めでたい食事

米国人に大人気の七面鳥は食べるとパサパサでおいしくないと感じられる。しかし、七面鳥はおめでたいときに食べる日本のタイのようなものである。米国に渡った清教徒が最初の秋の収穫祭で食べ物がなく困った際に、先住民のインディアンからの贈り物が野生のターキーで、それ以来収穫感謝祭のめでたいごちそうになったのだ。

ターキーはその歴史的な背景だけで人気があるのではない。鶏よりパサパサした身は、脂分が少なく健康的であるという面からも人気があるのだ。健康志向の米国では、鶏も同様に脂分の少ないホワイトミート(ささみなどの胸肉)が人気で、ダークミート(もも肉など)の脂分があるジューシーな身は安い。

日本や東南アジアでは逆でホワイトミートは人気が無く、ダークミートの方が高い。パサパサの焼き鶏などは人気がないのだ。米国で大人気のローティサリーチキンは回転式のローティサリーオーブンで丸鶏を、脂をじっくり落としながら焼くのだが、その肉のパサパサ感が日本では好まれず、普及しなかった。

◇酒

映画の影響から米国というと何でも自由であるというイメージがあるが、米国は清教徒によってつくられた国だ。その影響は未だ色濃く残っており、多くの人々は日曜日には礼拝にいく。日曜日は安息日であり神に祈りを捧げる神聖な安息日だ。

教会から帰ったら家で安息する日であり、買い物や外食に行く日ではない。日本の外食産業で一番忙しい日は日曜日であり、郊外の外食店舗は平日の三倍の売上げを上げる場合も多い。しかし、米国の外食店にとって日曜日は週で一番暇な日であり、ショッピングセンターも平日は夜9~10時まで営業しているが、日曜日は夕方5~6時に閉店してしまう。

一九二〇年代の米国は、禁酒法が施行されアルカポネなどのギャングが横行したことで思い出される。しかし、米国の禁酒法は過去の遺物ではなく、現代でも色濃く残っているのだ。

米国ビール会社のトップは、アンハイザーブッシュ社(バドワイザーで有名)。セントルイス市に本社を構える。そのセントルイス市に、ある夏の暑い日曜日、筆者が到着したときのこと。暑さに渇いたのどを潤そうとホテルでビールを注文したら、ないと言う。

品切れかと思ったら当州はドライステーツだと言う。日曜日は安息日で酒の販売は禁止なのだという。ビールの街セントルイスでも、酒を飲んではいけないというのは、カルチャーショックを感じさせられる。

◇もてなし

お客を呼んでごちそうというときの考え方が異なる。お客をもてなすときに日本では主婦が台所に閉じこもり、品数の多い食事を一生懸命に作る。米国ではお客を楽しませる会話や楽しい雰囲気が最もごちそうであり、みんなで団らんできる食事が中心となり、ハンバーガー、タコス、バーベキューは立派なごちそうだ。

そして食事を中心に皆で会話をじっくり楽しむために、夕食を最低二~三時間楽しんでいる。食事そのものでなく、もてなしと会話を楽しむのだ。

◆相違を理解のうえ導入

異なる文化、異なる生活によって生じる味覚の違いを理解したうえで、海外の外食を導入すべきである。日本人と米国人は味覚の基準が違う。それを理解せずに米国の料理はまずいと決めつけること、あるいは米国で人気の料理だから日本でもはやると判断することは早計にすぎるわけだ。

((有)清晃・王利彰)

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