厨房のウラ側チェック(22) 衛生教育はどこまで必要か(その1)
小生が、飲食店の衛生教育の欠除を感じるのは、客としてオープンキッチンの飲食店に入った時である。そこから見える調理人たちの動きや調理方法は、家庭でも考えられない不衛生なことをやっている。
一番に目立つ行為は、タバコ。それもくわえタバコ。次におしゃべり。ペチャクチャペチャクチャ。目の前のお客をなんと思っているのか、その上、調理道具を見れば、案の定、まな板は汚れ、傷つき、変色しているのだ。さらに、使用しているふきんはおしぼり、あるいは雑巾のような布。包丁はサビだらけ、柄は黒ずんでいるのだ。こんなオープンキッチンの調理人のユニフォームは、やはり汚れており、帽子もかぶらず、平然としている人が多い。
もちろん、このような状態のオープンキッチンなら、お客は誰れもこないだろう。
すべてがこの状態ではないが、多かれ少なかれ、食中毒や有症クレームを出している店舗はこんなものである。
店長の責任は売上高のみに傾いて、従業員の教育は全然やらない人が大半である。
このような状況の店舗は、表面のきたなさよりも、潜在的に細菌の巣や衛生害虫の巣があっちこっちにあるものだ。
もし、店舗衛生管理の一貫として、各種検査を実施すれば、結果は不適となろう。
では、良く見かけるきたない店を改善する有効な手段はあるのだろうか。
教育・研修と資格制度、その成果の確認を査察などでチェックし、人事考課に反映するシステムをリピートすれば、徐々に良くなるであろう。
飲食店の従業員教育のなかでポイントになる点は、役員と幹部の衛生知識と食中毒事件の法的解釈の度合、それに教育・研修の育成・成果までの時間と忍耐を必要とする点である。
教育・研修は反復であり、継続である。とくに、勤務年数の少ない飲食業界にあっては、すべての仕事に通じる道はひとつ。「連続は力なり」である。少なくともフードビジネスに関係する読者は、衛生にかぎらず、研修の必要性は認識しているものと信じるが、費用ともとめる効果のバランスを考える方がいるかもしれない。その答えは、長期計画なくして短期計画なしである。
教育・研修は、愛社精神を高め、自己管理能力を高め、学問をすすめ、組織を機能的に活性化させるものである。
次号より、具体的に衛生教育の段階別に目的と内容を記すことにする。
食品衛生コンサルタント
藤 洋