21世紀の内食・中食・外食市場の変化を読む
食の外部依存が高まるなか、各分野における数字の動きも大きく変動している。数字をいち早く分析し消費者ニーズにこたえることが、ますます重要になっていることは言うまでもない。こうした数字を踏まえた二一世紀の内食・中食・外食市場の変化を外食産業総合調査研究センター主任研究員・山腰光樹氏に展望してもらった。
経済企画庁が二〇〇〇年12月15日に発表した「平成11年度国民経済計算」をベースに、内食、中食、外食別に市場規模を推計した。但し、平成11年度から新たな算出法に変更されたため、本稿では年度変化を重視する観点から旧来の算出法で試算している(表1)。
九九年の食のトータルマーケットは七一兆九七二八億円、およそ七二兆円の市場規模である。そのうち、内食市場は三八兆円、中食市場は五兆八〇〇〇億円、外食市場は二八兆二〇〇〇億円となり、食の外部化率は限りなく五〇%へ近づいている。
最近五年間の動向をみると、食のトータルマーケットは年平均伸び率がマイナス〇・四%へと下降し、食の市場規模が停滞する中で、食品メーカー・中食企業・外食企業が生き残りをかけ、自らの事業分野を越えて仁義なき戦いがますます過激なものとなっている。
さらに三市場別に五年間の年平均伸び率をみると、内食市場の減少(一・五%減)、外食市場の停滞(〇・三%増)に対して中食市場は三・二%増と健闘し、停滞する食市場にあって毎年着実にシェアを確保しており注目される。しかし、対前年増加率は九七年七・三%増、九八年二・九%増、九九年一・二%増と増加幅は縮小していることに留意する必要がある。
一方、九九年の外食市場規模は、個人消費の低迷などにより家計での世帯員一人当たりの外食支出が前年より減少し、法人交際費も前年を下回ったことなどで、二年連続前年実績を下回り前年より一・二%減少した。しかし減少幅はやや狭まっており、かすかな回復の兆候が読み取れる。
今後の三市場を占う基礎データとして、二〇〇〇年9月時点での家計調査月報をみると、食料支出金額は対前年を下回っており、食のトータルマーケットは縮小する傾向にある。その中で、外食市場は前年並みの停滞をみせるなか、調理食品の伸びも横ばいで推移しており、中食市場の伸びが鈍化する兆しをみせている。
中食市場をけん引してきた単身世帯の食費支出構成比の変化をみると、全体では外食を控え、調理食品(中食)やその他の食費(内食)のウエートが増加する傾向にある(表2)。
従来は中食が内食と外食マーケットを浸食してきたが、今後は内食と中食そして外食を含めたボーダーレスな巴戦の様相が展開されよう。
深刻化するデフレ下の景気低迷が、消費者をより経済的な内食回帰へシフトする動きに加え、レディ・トゥ・クック(RTC)で衣付き・下味付きなど調理の下ごしらえがされている半調理品、レディ・トゥ・プリペア(RTP)で鍋物セット、カレーセット、肉じゃがセットなど調理のために食材が準備されているキット(セット)商品やカット野菜など、包丁やまな板を使わずにちょっと手を加える程度の簡便調理食品が供給側(メーカーや小売店など)の努力により多種多様なメニューとして展開されており、今後の内食市場成長の鍵を握っているといえよう。
また、表1の外食市場は、正確には外食産業の市場規模を示しており、外食企業が販売する持ち帰りや宅配の弁当・惣菜などが外食市場に含まれており、これらの売上げを中食市場に加えると、実質の中食市場規模はさらに拡大することとなる。
ちなみに、ハンバーガーの持ち帰り率は三六%を占めており(日本ハンバーグ・ハンバーガー協会、平成11年)、そば・うどん店の出前は六一%の実施率で、売上げの三九%を占めている(日本麺類業団体連合会、平成11年)。