21世紀の内食・中食・外食市場の変化を読む:5つのポイント踏まえて“創食”

2001.03.19 224号 3面

二〇世紀の日本の食は飢餓の時代から瞬く間に“豊食”の国へ脱皮した。しかし、その内面をのぞくと“飽食”から“放食”と表現されるほどに自由放任な食生活の弊害が生活習慣病や環境問題など社会問題化し、しつけや教育問題など基本的な人間性の在り方までも食とのかかわりで問われるようになってきた。折しも国の食生活指針が発表されたが、より具体的に実践すべく産・学・官の強力な推進体制の下に早急に対応すべき課題である。

二一世紀は食を通してより創造性を高める、クリエーティブな食ビジネスが求められる。まさに人類の英知を集結した“創食”への挑戦である。留意すべきポイントは次の五つである。

◆Eatertainment(楽しい食事)の提案

eatという食べるという言葉と娯楽のEntertainmentを合成した言葉で、食生活指針の第一番目にあげられている「食事を楽しみましょう」の実現である。家族の団らんや人との交流を大切にし、大皿料理やテーブルクッキングにより和気あいあいと食卓を囲む。さらには、食事作りの場面でも全員参加で楽しく作る。こういった場面を家庭の食卓やホームパーティー、外食店で実現できるよう、食べる楽しさを演出するハードとソフトが、食ビジネスの大きなポイントとなる。

今や、楽しくなければ食事ではない。内食・中食・外食ともに楽しい食事の実現へ向けた知恵(商品・サービス)が問われている。

二一世紀は料理教室を兼ねたキッチンシアターレストラン、エンターテインメントレストランに期待したい。

◆Whole Health Solutions(健康なライフスタイル)の提案

食の外部化率が五〇%に迫る勢いの二一世紀において、家庭外で調理された市販の料理品や外食では、好きなメニューだけの食事となりがちで、栄養バランスに偏りが出るという危惧が消費者各層まんべんなく指摘している。食生活指針では第三番目に「主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」とうたっているが、栄養知識が乏しい現代人にとって生活者個人の食生活管理をベースとする健康サポートシステムといった高次のサービスシステムが、ミールソリューションの重要な鍵となる。否や、ミールだけに限定せず、全体として健康なライフスタイルを具体的に提供することがポイントとなる。

生活習慣病予備軍や要介護状態にならないための、シルバー世代に対するヘルスケアサポートシステムの早期確立に期待したい。

◆テークアウト・デリバリー・ネット通信の展開

高齢社会、情報化社会の到来は、テークホーム(職場・学校を含む)ミールやデリバリー(宅配)機能、インターネット通販(電子商取引)など多様な販売方式による提供が求められる。

特にシルバー世代の中食利用が急伸しており、揚げ物料理は市販の完全調理済み食品タイプの選択が四五%と圧倒的に多い。ミールソリューションの典型である最も加工度の高いレディ・トゥ・イート(RTE)食品の購入が日常化していることがうかがえる。今後の中食増加意向はシルバー世代が四割と最も多い。次いで、外食増加意向三五%。内食増加意向は二二%と最も少ない。

つまり、高齢化とともに食の外部化が進展する様相にあり、今後一〇年あまりで団塊世代がシルバーゾーンに突入し、価値観の多様なニューシルバー世代の登場は中食、外食に対しても積極的であり市場の拡大が期待される。

二一世紀は食事宅配・買い物代行サービス、インターネット・テークアウト&デリバリーサービスに期待。

◆食後のミールソリューションへの対応

環境問題は二一世紀の最重要課題である。家庭の主婦が食問題のトップにあげるのは、加工食品のパッケージやトレーが多すぎて家の中にたまってしまうという悩みである。バイキング方式は衛生問題を抱え、個食パック化の問題は急を要する課題である。また、消費者の過度な鮮度志向や無添加への欲求は廃棄ロスを増大させ、生ごみ対策がさらに深刻化する危険性を抱えている。

現在進行中の献立支援、代行などの食前ミールソリューションから、今後は後片付けやごみ問題などの食後ミールソリューションがポイントとなる。また、企業や商品の評価基準として環境や福祉への取組みが増大している中、エコクッキングによる商品開発や高齢者、障害者にやさしいバリアフリー店舗など、環境・福祉経営が問われてくる。

二一世紀は、環境に優しい、体に優しい、財布に優しい「エコロジー」と「エコノミー」を兼ねたエコレストラン、エコクッキングによる新商品開発に期待する。

◆“創菜”への限りなき挑戦

「そう菜」には四つの視点がある。「惣菜」とは、物(素材)に心を込めて惣菜となる。それは、おふくろの味やおばあちゃんの味といった手作りのぬくもりがあり、安らぎや楽しみが感じられるもの(コンフォートフード)でなければならない。つまり、作り手(供給する側)の心=ハートウエアをどれだけ有形・無形に表現できるかにかかっている。

「総菜」とは、トータルとしてのおかずを指す。それは品ぞろえの幅と深さ(バラエティー)、そして一貫性という側面を有する商品構成が要求される。つまり、アソートメントとしての「ハードウエア」(商品力)が問われることとなる。

「早菜」は、日持ちのしない超生鮮食品としての商品特性を持つ。そこでは、単なる出来合い食品から出来立てですぐ食べられる食品であることが最大のセールスポイントとなる。提供時間が短く、手ごろな価格で提供されるファストフードの性格を有し、利用する消費者にとってタイムシェービング(省時間)としての便益商品でもある。つまり、時間軸としての「タイムウエア」が求められる。

「創菜」とは、ロマン(夢)を追い求め、創意工夫を凝らしたイノベーション(革新性)やオリジナル(独創性)といったクリエーティブ(創造性)豊かな「ソフトウエア」づくりへの限り無き挑戦である。

(外食産業総合調査研究センター主任研究員・山腰光樹)

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