トップインタビュー:ヒガ・インダストリーズ常務ドミノピザ事業本部長・鈴木稔氏

2001.08.20 234号 3面

ドミノ・ピザを展開する(株)ヒガ・インダストリーズは、今秋からFC展開に乗り出す。昨年一号店をオープンしたファストフード店の大量出店に勢いをつけるとともに、デリバリー店の拡充で、競争が激化する宅配ピザ業界での市場拡大を狙う。事業を指揮する常務取締役ドミノ・ピザ事業本部長の鈴木稔氏に聞いた。

‐‐現在の宅配市場について。

鈴木 宅配ピザはここ二年ぐらい頭打ちの状態だが、宅配全体のマーケットは年一〇%を超える成長をしている。宅配ずしの急成長と、ファミレスの宅配進出がそのけん引役。特にファミレスは、すかいらーくに他社が追従し、今後大きく伸びる可能性がある。それに対抗し、ピザ専門店でもピザ以外の商品でメニューの多様化が進むだろう。ただ最終的にはすみ分けができて、われわれは専門家として、ファミレスとは違う品質のピザを提供することで、宅配ピザのジャンルは守っていけると思う。

弊社としてもメニューの多様化を考えているが、サイドオーダーをもっと充実させたい。それも品数を増やすのではなく、サラダならロックフィールド、コーヒーはスターバックスというように、ウチはピザに徹し、サイドはブランド力のある他社の商品を扱うことで、他社との差別化を図りたいと考えている。

‐‐売上げなどの近況は。

鈴木 二年ぐらい前年割れというきつい状況だったが、昨年秋から回復し、今は前年対比一一〇%で推移している。要因のひとつは、全体のプライスゾーンを低くし、味のバラエティー化を図ったこと。これまでMサイズは二〇〇〇~三〇〇〇円が主流だったが、一四〇〇円、一六〇〇円、一八〇〇円のロープライスのメニューを各二種ずつ投入した。またイタリアン系、シーフード系などいくつかの味の軸を作り、それぞれのメニューに価格の幅を持たせた。新商品の投入時期も三ヵ月ごとから一・五ヵ月ごとにサイクルを早め、常にお客さんに新しいものを提供している。販促ではリーフレットなどにタレントの飯島直子さんを起用したことも好感度が高かった。

‐‐一時期は半額セールが隆盛だったが。

鈴木 あれはテークアウトのマーケットを開拓する狙いがあった。そのためにはディスカウントが一番。海外ではテークアウトの比率が全体の一五~三〇%あるのに日本はまだ数%しかない。結果は三倍くらい伸びたが、長期のセールではデリバリーに影響が出てしまった。

‐‐Sサイズピザの導入について。

鈴木 地方店舗で始めており、都内でもこれから増やしていく。八インチ一〇〇〇円ほどで一枚でも配達する。実際はMサイズ一枚よりSサイズを二~三枚という注文の仕方が多いようだ。オーダー比率は高いところでは二五%ある。

‐‐これまで直営運営だったが、いよいよFC展開を始める。

鈴木 FC導入の動機は、昨年10月初めてファストタイプの店を川崎市にオープンした。今後三年で二一〇店の出店を計画している。だが駅の近くなど誘導人口の多い立地を選ぶため物件取得がなかなか難しく、保証金も高い。FCで展開せざるを得なくなり、デリバリーもFCを導入することになった。

‐‐デリバリーのFCでは直営並みの売上げを設定しているのか。

鈴木 直営で大都市圏をすでに抑えているので、FCは地方が中心になるだろう。売上げが五〇〇~六〇〇万円で利益が出るよう縮小した設備で投資が少なくなる。ただ新規の開業より、ローカルチェーンがブランド転換する方が現実的だと思う。FC募集は早くても今年10月以降の予定。本部機能を確立する準備をいま進めているところだ。

‐‐ファストフード店の概況は。

鈴木 モーニングの時間帯の売上げがわれわれの想像と大きくかい離してしまった。違うメニューを提供するか、モーニングの時間をカットするか検討している。また実験的にピザの価格をすべて同一にした。それによって持ち帰り客に対し、何枚でいくらというインパクトのある売り方ができる。これはKFCのチキンの販売手法と同じだ。

‐‐デリバリーはこれまで三輪バイクが主流だったが、最近二輪が増えてきた。安全性や操作性はどうか。

鈴木 弊社ではホンダのスーパーカブとヤマハの屋根付きギアを試験的に使っている。三年見ないとトータルコストは結論が出にくい。二輪には、過重やボックスを取り付けることの問題、天候の影響などがあったが、ヤマハのギアはそれらをクリアした点で今後伸びる可能性があるだろう。

‐‐宅配ピザ業界の展望について。

鈴木 われわれの計画では、全国に出店できるポイントは九九七店ある。それに対し、宅配ピザ店は全部で約二五〇〇店あり、エリアによっては過密化している。まだ個人チェーンや個人店が多数残っているので、今後はそれが五~六社に集約されてくるだろう。

◆(株)ヒガ・インダストリーズ/ドミノ・ピザ事業本部=東京都千代田区岩本町一‐一〇‐三、紀繁ビル、電話03・5820・3650

◇企業の横顔

◆ドミノ・ピザ=世界に約七〇〇〇店舗を展開する米国のデリバリーピザチェーン最大手。(株)ワイ・ヒガ・コーポレーション(現・(株)ヒガ・インダストリーズ)のアーネストM.比嘉社長が日本ライセンスを取得し、昭和60年東京・恵比寿に一号店をオープン。デリバリーピザブームの火付け役となる。現在、直営一九八店舗のほかファストフード三店舗を展開。ピザ等宅配業安全運転管理協議会の運営に取り組むなど、デリバリー業態のリーダー的役割を担っている。

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