基礎調味料の基礎知識(3)醤油

2002.09.02 259号 14面

◆種類と概要

◎こいくち醤油

醤油といえば、こいくち醤油というくらい全国で生産され、醤油全体の八三%を占める。濃色で柑橘様の芳香と濃厚な味を持つので、和風はもちろん、中華、洋風の料理にも広く使われる。

かけ醤油としておいしい香味をつけ、また蒲焼き、照り焼きなどでは、色、味、香りの上に、テリと若干の焦げ臭も加わってこの醤油の特徴を発揮する。生臭みの多い青魚や肉などにもにおいを抑え、素材と醤油の豊かな風味が融合し、食欲をそそる香りと色を付け、強い味わいに仕上げる。

そばつゆに代表される「つゆ類」には、醤油と鰹節が調和した風味の強いつゆに仕上がる。

◎うすくち醤油

製造の各工程で色の増加を抑えながら作り上げたうす色醤油で軽く爽やかな香りを持っている。塩分が高めで濃厚さはやや低いが、甘酒を加えて味を調え、穏やかな醤油風味を備えている。

生産量は醤油全体の一四%。野菜や白身魚の煮物、うどんなどに使って素材の色と風味を生かし、だし味のきいた上品な薄味の料理に仕上げる。

吸い物で代表されるように昆布の風味を損なわず、鰹節などの風味を合わせて色が薄くまろやかで深い味わいに仕上げる、美しくおいしい日本料理の特徴を生かす醤油である。

◎たまり醤油

大豆とごく少量の小麦を使い少ない塩水で仕込むので、大豆からできるうまみが強く、濃厚で独特の香りを持った濃色の醤油である。近来小麦を増やし発酵させ、こいくち醤油風に近づけたものが増えてきている。

主産地は愛知県とその東西地域で、色沢、味わいともに濃厚で重厚感があることから、照り、赤味の色を付ける目的や佃煮、せんべいの加工用として使われている。

◎さいしこみ醤油

仕込み塩水の代わりに生醤油を使って二度仕込みをして作るもので、成分が濃くなり発酵しにくいため、濃厚な香りは強いが醤油の芳醇な香りに乏しい。味、色ともに濃厚なので、刺身やすしなどに使われる。

◎白醤油

小麦とごく少量の大豆を使い、短期間で仕上げる超薄色醤油で、ほとんど発酵させてないので、糖分は非常に高いが、麹風の香りが主で芳香がなく、うまみが少ない。

主産地は愛知県で、吸い物、鍋物のほか、きしめんなどに使われる。

◆生産方式と料理

◎本醸造醤油使用

だしや素材の味を引き立て、後味をすっきり仕上げる。甘みが引き立ち、発酵香に優れる複雑な味になる。

◎新式醸造醤油使用

うまみが強く全体的に濃い味に仕上がる。後味が強く、しつこい味になる。だし素、素材の味が強いうまみで隠され、単調な味になる。発酵香が弱い。

◆種類と調味特性

こいくち醤油とうすくち醤油で別個に作った料理の特徴を図で見て考えてみて下さい。大きい円は青身魚やクセの強い肉類などの素材で、大きい三角形はこいくち醤油です。濃い色、濃厚な味と強い香りを持つので、クセの強い素材のにおいを消したり、しっかりした色と味をつけることができます。しかしながら、小さい円の野菜や白身魚、うどんなどクセのない素材では、素材の味や色、だし風味ともに大きな三角形にスッポリ入って、こいくち醤油の色、味、香りに隠されてしまいます。

一方、小さい三角形で表す色がうすく穏やかな風味と軽い香りのうすくち醤油でクセのない素材を調理すると、全体の味をまとめながら素材の色、味を生かし、だし風味もきいた料理にすることができます。クセの強い素材の料理には生臭みが残り、着色、味つけともに淡白になります。

たまり醤油では、大きい三角形の味と色がさらに大きく伸び、香りが後退した形でこいくち醤油よりさらに強く味付けし、逆に素材本来の風味が隠れます。

白醤油は、小さい三角形の色、香りのコーナーが著しく後退し、味は糖分が突出しますので、超薄色の吸い物、色を付けないせんべいなどの味と照り付けに使われます。

◆上手な選び方・使い方

多忙なプロは料理の味が目でつけられる醤油を選ぶ。一般消費者は味をみながら味付けする。

(1)各種類の醤油ごとに持つ特徴を色・味・香り・バランス良く備える。

(2)常に品質が安定したもの。

(3)使用量に合った容量の品を新鮮な状態で使い切る。

(4)醤油は控えめに使い、素材の色・風味を生かす。

(5)醤油は加熱変化が激しいので、良い変化も料理によって活用する。

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