今年注目の店:単一素材を売りに目的客を獲得する 新保克典氏

2003.01.15 264号 6面

無国籍料理や創作料理を掲げた店が乱立したが、コンセプトがあいまいで飽きられはじめている。これを見直し、今後は限定した単一素材で、「豆腐の店」「牛肉の店」と明確にうたった専門店が躍り出るだろう。

客は、店が考える以上に「何が食べたい」という具体的なイメージを持っている。そこを専門化していく。業態を前提にたくさんのメニュー(素材)を詰め込むのではなく、単一素材を主体に周辺を多様化(肉付け)する形になるだろう。単品素材の品質も、仕入れにおいては絞り込んだ方が良いものが手に入る。

とくに注目している素材は豚肉だ。日本人の嗜好に最適で、用途も幅広い。西麻布の「とんとことん」や恵比寿の「ぶた屋」など品種や産地限定の豚を使った専門店が話題を呼んでいる。

料理の提供方法については、テーブルクッキング(セルフサービス)が増えるだろう。いまの若者は友達が少ないため、大勢で食事をすると会話がない。彼らを楽しませるには、調理作業を提供するのが手っ取り早い。すなわち鍋、焼き肉、鉄板焼きである。家族団らん同様、皆で共有したものをつつくことで会話が生まれる。

とくに鉄板焼きは、一台で蒸し・焼き・揚げなど何役もの調理が可能。メニューもいろいろアレンジできる。また、視覚、嗅覚、聴覚で楽しめる。セルフサービスは人件費削減のメリットもある。客と一体化する料理を出す業態が増えてくるだろう。

◆新保克典(しんぽ・かつのり) (有)マージョラムインターナショナル代表取締役 昭和35年新潟県生まれ。東京會舘を皮切りに仏料理に従事。渡仏後、二ツ星「ムーランドムージャン」「グァルティエーロマルケージ」などで修業。帰国後「南部亭」料理長を経て渡米。「ドレイズ」「メルローズプレイス」などの料理長を経て、帰国後(株)グローバルダイニング総料理長に就任。昨年、メニューコンサルタントとして独立。

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