関西版:讃岐うどん「麦まる」の1号店オープン、本場の風味で多店舗展開狙う
グルメ杵屋が展開するセルフ方式の本格讃岐うどん「麦まる」の一号店は本社に隣接する北加賀屋店(大阪市)。「讃岐うどん」〈冷・温〉並(一玉)一八〇円~、想定客単価五〇〇円で4月15日にオープンした同店は、平日に五〇〇~六〇〇人、日・祝には約一〇〇〇人の客が訪れ連日賑わっている。「杵屋」を主業態とする麺類最大手の同社だが、そのほとんどはフルサービスの店舗。「セルフ方式の麦まるはホールの従業員の経費がかからない分、単価が低くロスもある。今は実験段階」というのは神山(ごうやま)忠重ベンチャーカンパニー・ベンチャー事業部部長。神山部長は同社の第二の主力業態である信州そば処「そじ坊」を、一〇年間で約一三五店舗、約一〇〇億円規模に育て上げた立役者だけに、今後の「麦まる」の展開が注目される。(1面記事参照)
「讃岐うどんの本場の讃岐地方では、数年前から従来のコシが際だつ“ゴツッ”とした麺(男性的麺)に代わり“モチモチ”“ツルツル”感のある麺(女性的麺)が増えてきていた。パンでもそうだが、今の消費者の志向が軟らかい食感のものにシフトしてきている。この麺は特に冷たくするとおいしい」と神山部長。讃岐うどんブームの中で多店舗展開している企業は、各社この“ツルツル・モチモチ”系のうどんを使用している。したがって「もともと関西には浪速うどんというものがあるから、讃岐うどんが関西人の口に合わないということではない」「当社では麦まるに先だって、杵屋とは差別化している」(同)という。
「麦まる」は、基本的には「杵屋」で培った自家製造での最高においしい状態の麺とダシで提供するやり方で始まった。
多店舗化は手慣れている同社だが、店舗展開については「現在の讃岐うどん市場が大ブームに乗って非常に荒れており、近い将来どうなるかわからない状況にある。様子を見ていきたい」「最終的には味の良いところが残るのではないか」(同)と慎重である。また杵屋に比べ低い価格設定の「麦まる」は、セルフ式のためホール係の人件費が低く抑えられるメリットがある半面、閉店間際まで天ぷらトッピングなどの商品を陳列していなければならず、残ったものはロスになるため「既存の業態に比べて原価率は若干高め」(同)。
「麦まる」では閉店の三〇分前にオーダーストップを実施すると共に、その時点で万一陳列していないものがオーダーされた場合、精算はしてもらい、すぐに席まで提供するように対応している。
具のメーンの天ぷら粉は、さまざまなテストを行い、セルフの特徴である作り置きの陳列でも、できる限り揚げたての“サクサク感”が維持できるものを使用している。また好みでチョイスするうどん玉は、管理しやすいよう一サイズにした。
客単価は事前の想定通り約五〇〇円。「讃岐うどん」並一八〇円の設定は「商品の品質と価格のバランスという点で適正と考えている」(同)と、品質重視で低価格路線はとっていない。
◆記者からの一言
讃岐地方独特の食べ方で関西でもなじみのうすい「生醤油うどん」(冷)をいただいたが、ほどよいコシの麺と杵屋独特のダシ感、柑橘系の相性が抜群で絶品だった。(吉岡)
<メニュー>
▽「讃岐うどん」〈冷・温〉並(一玉)一八〇円、大(二玉)三〇〇円▽「讃岐ぶっかけ」〈冷・温〉並二六〇円、大三八〇円▽「釜揚げうどん」〈温〉並二八〇円、大四〇〇円▽「釜玉うどん」〈温〉並三三〇円、大四五〇円▽「生醤油うどん」〈冷・温〉並二六〇円、大三八〇円▽「ざるうどん」〈冷〉並二八〇円、大四〇〇円ほか▽「天ぷらトッピング」九〇~一二〇円、一二~一五種▽「おにぎり」各種一〇〇円。ほかに一品料理、おでん、ご飯、ドリンク(アルコール含む)
【モデル店舗】▽「郊外型路面店」店舗面積五〇~六〇坪、席数一〇〇席、駐車場三〇台、立地・住宅地▽「都心型路面店」店舗面積四〇~五〇坪、席数一〇〇席、立地・駅近く